それは、人が転ぶフラグの山……。融けるからいいじゃんって言う人もよくいますが、とりあえず歩道に厚み10cmで氷張ってる場所ではただのスケートリンク化です…。ブーツの防水性なかったら多分靴下もアウトだった…
さて、書き溜めているものを放出放出です。
いつでも静かで池袋とは大違いな、高級住宅街の一角。
いつ来ても大きくて広い家だなぁと、純和風の屋敷である折原邸を仰ぎ見て帝人は感嘆の息を漏らした。
ドラマや映画に出てきそうなその屋敷は、たった四人しか住んでいないというのにしっかりと掃除が行き届いている。
「帝人?早く入れよ~」
「あ、うん」
犬を飼おうかなんて話が出ていると先日言っていたが、この屋敷では犬も自由に走り回れてさぞや楽しいだろうと思う。そういえば、野良が臨也の部屋付近に住み着いているとも先日言っていた。
「あぁ、あの人餌とかはやんないんだけど頭撫でたり構っちゃうんだよな。おかげで寝床代わりにされてるんだよ」
にゃー。と、声が聞こえて庭を見ると、まるでお帰りと言っているかのように黒猫がこちらを見て行儀よく座っている。真っ黒な、黒猫だ。どこか、それが臨也らしく感じる。
猫は、こちらに近寄るでもなくただそこにいた。臨也の書斎近くの木陰から、そこが定位置だといわんばかりに。
「…飼い猫、じゃないんだよね?」
「おぅ。あえて言うなら、臨也さんの部屋の猫だ」
正臣は猫には目もくれず、勝手知ったる我が家と居間に荷物を置き、食材を冷蔵庫に詰める。どうやら、今日は最近女性陣がはまっている他人鍋の予定だったようだ。鍋がすでにシンクの上に置いてある。
というか、この食材はもう自分達で処理しろということでいいのだろうか。
「帝人、パソコン持ってくるから手伝ってくれ」
「え、そんなに重いの?」
「いや、液晶三つつなげて使う。沙樹、配線って余ってるのあったか?」
「多分、そこの棚に入ってるよ」
そう言われて近くの棚を開ければ、ビニール袋に小分けされた形で、いくつかの配線が入っている。赤いマークの入ったシールの配線。と言われ、帝人はシールに赤い点の入ったものをすべて取り出した。
「よし、とりあえずハードはこれで…。杏里も手伝ってくれ。モニタはそんなに重くないから」
「はい」
国内の人間が犯人で、被害者がどんな人間かも知らずにやった事ならば、ここまで大がかりに準備をしようなどとは思わないだろう。しかし、今回の被害者は、その人は長い間裏社会で息抜き、今も立場を変えど頼られる『新宿最凶』の男に唯一命令できる人だ。六実に龍輔、そして、日本警察の上に立つ、決して真っ新とは言えない、しかし、潔白であろうとする人。犯人がどう意図であろうと、それらは決して敗北を許さない状況なのだ。
モニターをセットして、正臣はすぐに電源を入れる。ログイン名は正臣の物。これを入れるだけで、このパソコンと繋がる、『どこかの誰か』は、臨也の代理が出てきていることを知る。
それを実感するのはすぐで、チャットを開けば見慣れた名がこちらへ話しかけてきた。
チャットだ。
「お久しぶりです。『バキュラ』です、九十九屋さん」
『久しぶり…だな。どうやら俺が一番乗りか』
**********
あぁ周りの視線がうざい。
言葉にしたら、それをまだ前の仕事中だったお前に言いてぇよ。と返ってきそうな言葉を何とか飲み込んで、臨也は池袋署の前でとある車を待っていた。とあるといっても、被害者の娘で冬弥の姉である女性だ。旦那と母親も来るとのことで、顔見知りの臨也が出迎えに立つと立候補したのである。
それでなぜ冒頭のセリフに行くのかというと、池袋西署の前に、20代前半くらいの野次馬がゾロゾロとたむろって、こちらに携帯のカメラを向けているからである。中に入ってそれらから逃げたいが、あと少しで到着する。何てメールをもらったからには外にいないといけない。
「折原警部…あの」
「あぁ…大丈夫。心頭滅却すれば火もまた涼し。頑張るよ…」
あまりにも辟易したようにため息をつく臨也を気の毒に思ったのか、署の前にいる警察官が気遣わしげに声をかけてくれる。もう、何だかそれさえもむなしい。
あぁ早く来て!あそこの野次馬蹴散らして!なんて思っていると、その祈りが天に通じたのかただの偶然か、車のクラクションの後に見覚えのある車が入ってきた。駐車場の隅の方に止めて、慌てたように出てくる女性は、いつもお世話になっている、そしてよく旦那の無駄遣いを上申している奥方である。
「折原君、冬弥と、あの人は…!」
「落ち着いてください。中へご案内します。あぁ、女性警察官を一人以上つけてください。被害者の関係者です。丁重に」
「はっ!警部は…」
「捜査本部に、警察庁の人間が必要以上に居座るのは得策とは言えないでしょう。ただの無言の圧力だ。冬弥君の取り調べにだけ立ち会ったら、俺は一度戻ります。上の指示や面倒な手回しが必要な場合は管理官を通して連絡を。トップダウンでさっさと承認させます」
「了解しました。こちらへ」
携帯で色々と打っている人間も見える。おそらく、色々と書き込んでいるのだろう。便利になった分面倒だ。しかし、
「折原警部」
「ん?」
「お電話が鳴ってます」
先程自分を気遣ってくれていた署員の指摘で携帯を見ると、確かに着信のランプがついている。ありがとう、と一言告げて、臨也は通話ボタンを押した。
「やぁ。そっちの準備はできてる?」
『できてます。臨也さん。…いや、甘楽さん』
その面倒で便利なものを活用してこそ、情報社会で今まで生き抜いてきた折原臨也の腕の見せ所というものだろう。
あとがき↓
次回からちょっと長めにチャット回です。この長編はチャット多いです。
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