書き溜めている分を早めに上げちゃえ!ということで。四月からネットが使えない?らしいところに一月こもるので、それまでに話の展開進めたい…!そしてめざせ、初任給で料理シリーズ高校生編!修学旅行編はこちらで中編扱いで上げようと思います。もし再販とかなったら、入れようかなくらいの心持ち。
拍手の返信などは後日で!
さて、続きはパーキングに入ってくる臨也さん達からです。
いつもながら、オリキャラ注意!
「あ~…」
「何?どうしたのよ」
「ほら見てあそこ。若葉とリュウと子供たちはいいけどさぁ。…門、田、たちがいる」
「門田って…あぁ、貴方の高校の同級生の」
「そう。どうしようかなぁ?」
いつもの車ではなく皆でお出かけ用に買ったワゴンであった為に、随分と遠回りできてしまった臨也達は、若葉に指定されたパーキングへ入ろうとして、見慣れた姿を見つけた。否、見慣れたというのは可笑しいだろう。
「別に、気にする必要はないでしょう。仕事で来ているんだから」
「うっわ、波江さん手厳しい…。まぁ、その通りだけどねぇ」
手早く券を取って、リュウの隣に駐車する。リュウが私服ではないのに少々驚いたが、おそらく私服だと手帳を見せても顔を知らないものには信じてもらえなさそうと考えたからだろう。その様が安易に想像できて、臨也は少し笑った。
ちなみに、臨也の服装はボーダーのワイシャツに黒のパンツなので、それっぽい上着さえきれば大丈夫だろうという体だ。
「お疲れ様です、折原警部!」
ドアを開ければ、若葉の凛とした声が響く。数秒迷いながらも、臨也は車から降りて、朗らかに笑った。
緩いウェーブの入ったボブカットの女性…若葉が、パリッとしたスーツを着こなして直立不動で敬礼している。隣でにやにやと笑っている龍輔とは豪い違いだ。
「お疲れ様。連絡ありがとう若葉」
「いえ、こちらこそ、休暇中にお呼びたてして申し訳ありません!」
「いいや、こんな緊急事態だ。構わないよ。正臣、沙樹、車頼むね」
「はい!」
「はい、あの、帝人君たちも一緒でいいですか?」
沙樹の問いに、あぁ、協力してくれるのかと悟って、助手席にいる波江と視線を交わした。
「うん、大丈夫だよ。もしかすると着替えとか頼むかもしれないから、その時はよろしく」
「「はい」」
頷いてくれた二人に車のキーを預け、最低限の物。と、携帯と手帳、それに、上着を手にドアを閉めた。視線を感じるが、しかしそれに取り合う暇は許されないだろう。軽口を叩きながら仕事を進める自信はあるが、この池袋の住人と、言い合いながら仕事ができるとは思えない。
「若葉、状況報告と今後の捜査方針、署の方から上がってきてる?」
「今、本部の設置を急がせてます。冬弥君があちらにいますから、お願いしてもいいですか?」
「あぁ、混乱してんのか。ま、知り合いの人間がいた方が幾分いいか…。ちょっと落ち着かせたら本部まで連れてって、調書取りながらだな。リン?」
「ま、そこらへんは任せよう。俺達が出張っても下が窮屈に感じるだけだし、じゃあ…リツで」
「おぉいいな。リツで」
「え、そんな決め方…」
「上の爺にどうかって言えば、まぁ大丈夫だ。今回はある程度好き勝手やらせてくれっと思うけどな」
「大丈夫、指示系統はしっかりさせてるから」
「おぅ、お偉いさんの手綱を引くのも部下の務めだぞ?」
どこか茶化した物言いに、若葉は肩を落とした。この二人は、否、この人達の同期は真面な人がいない。しかし、それ故か優秀な人も多いものだ。助かっているが、精神が鍛えられているだけの気もしてならない。
そんな上司と長い間張り合えている若葉にも実は尊敬の念が注がれているのだが、当の本人はそんなことにはまったく気づかなかった。
「おい、いざ「とにかく、こちらへ!詳細を説明します」…や…」
「あぁそうだね。時間が惜しい。一分一秒も無駄にしたくない、俺には次の有給が待ってるんだからね!」
「お前…そっちかよ」
「当たり前でしょ、久しぶりに皆で旅行だよ?そのために仕事を頑張るんだから誉めてほしいよね、事件も早期解決して一石二鳥!」
ジャケットを羽織り、そう言って紀田達に手を振って去っていくその姿は、確かに『臨也』なのに、違う人間に見えた。一瞬でも考えてしまう。あれは、本当に臨也か?否、紀田達と知り合いという時点でそうだと確定できるのに、彼らが臨也へ送る眼差しが、臨也が彼らへ送る眼差しと優しさが、門田の脳裏に移っているものと違いすぎた。
「おい、紀田…これは、どういうことだ」
「…すみませんが、今お話ししてる余裕はないです。車動かさなきゃいけないし、家で、待っていないと」
「ね、あれほんとにイザイザ?死んだんじゃなかったの?」
しかし、と引き留めるように言葉を紡ごうとした門田を遮って、狩沢が少々興奮気味で口を開く。それを見て、腕時計を見て、紀田はただ、当たり前の事実のように答えを口に出した。
「あれは確かに、正真正銘、折原臨也さんです」
貴方たちの知る、新宿最凶の情報屋では、ありませんけどね。
とは、口に出さずに。
********************
その情報が、瞬く間に池袋に広がったのは当たり前と言っていいだろう。
彼を恐れるもの、彼を崇拝していたもの、彼と取引をしていたもの、娯楽に飢えていたもの。
皆がその情報に食いつき、それは尾鰭をつけて広がっていく。
曰く、
折原は警察官だった。
折原は結婚して足を洗った。
折原は一年前の事件で警察と取引をしていた。
折原は一年前、取引現場を押さえられたが、警察と取引をして警察に入った。
折原は記憶喪失になった。
折原は子持ちになった。
…など、どう突っ込みを入れていいのかわからない、しかし見方を変えれば真実な情報も飛び交った。
そして必然的に、野次馬が事件現場周辺に集まる形となる。
「…うっわ、どうすんだこれ」
「若葉、手当たり次第に目撃情報探せ、怪しい車、人間、引っ張れるものは引っ張って事情聴取、あと、」
「はい、了解してます。冬弥君の方お願いします」
しかし、そこは折原臨也。それらを利用して情報収集をすることしか考えていなかった。ネットでも、噂でもいい、怪しい車、そのナンバー、色、車種。飛び交えば飛び交うほど都合がいいのだ。ネットであれば帝人に頼もうと考えるが、人の記憶は一分一秒薄れていく。早いに越したことはない。ネットも、古い情報は埋もれやすい。
「えぇっと、あの、本部から…?」
「あぁ、被害者の部下でもある。息子さんとも面識があるから、合わせてくれないか。貴方達の立ち会いも別にかまわない」
「はっ、こちらです。少々錯乱しているようでして…」
「池袋署に行かせる前に、自宅に連絡をしておくか。娘さんは確か、今日は家にいるんだったかな?」
「実家に帰ってきてるって言ってたしな。旦那と一緒に来てもらおう。池袋署の位置は…」
「あの車、カーナビ付いてる」
「りょーかい」
家族への連絡もままならない状況だろう。あえて自分の携帯から連絡する斎城は放って、臨也は覆面パトカーの後部座席に腰かけて頭を抱えている青年に近寄った。外の空気を吸わせるためか、足は外に置いてある。その足は少し震えていて、そういえば父親っ子だったなと、臨也は数年前のことを思い出した。
「冬弥君」
そう一言、言葉をかけただけで、青年は、冬弥はガバッと頭を上げた。少々涙目になっているようで、やはり混乱しているようだった。
「臨…也さ…」
「少々遅れてしまって悪かったね。俺も、リュウも、リツも、若葉もいる。実動部隊には同期も配属されてるだろうし、上だって、このまま黙っちゃいないだろ。犯人の目的も調べないとね」
座っている彼と視線を合わせるようにしゃがみこんで、頭を軽く叩く。
「君の記憶も、もちろん手がかりだ。ゆっくりでいいから、ちゃんと、繰り返し、皆に話せるね?」
繰り返し、と言ったのは、恐らく何度も聞かれることだろうと思ってのことだ。そのたびに記憶があいまいで違うことを言われてはたまらないし、虚偽を言っているのではと彼が疑われる可能性だってある。
「君のお父さん…我らが上司を、早く見つけてやろう」
かくれんぼは、鬼は好かないんだ。
そう茶化して言えば、少しだけ、表情が明るくなった。
あとがき↓
進め進め!ということで、サブタイ付きでしばらく進みます。今回は、池袋への【凱旋】。
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