死屍累々。
待機場所であり寝泊りする場所でもある寺の堂内の有様を見て、臨也が思うのはまずそれであった。
良い年した野郎共が、何処の誰とも知れぬ男が持ち寄った酒でどんちゃん騒ぎの末酔い潰れ。いや、いい年してるからそうなるのだろうか。
二日酔いで唸る年嵩の仲間達を防具を脱がせ布団へと追いやり、冷やした手ぬぐいを当てておく。後は、井戸までセルフサービスだ。何度も酔っ払っている大人が対処法を間違えるわけがない。そう願いたい。
物資調達に出た医学に詳しい人間達が早く戻らないものかとため息をついたところで、ふと、四人ほど姿が見えないことに気がついた。
「あれ、」
いないのは、現在ここを拠点とする攘夷志士達の中心人物であり全体を率いる、しかしまだ元服から数年しかたっていない少年達。臨也の義兄で、仲間で、自分に命令して良いと定めた人達。
「ねぇ、兄さん達は?別室で酔い潰れてるの?」
「あ?あー…いや、率先して呑んでだぞ。潰れたのは坂本以外一番最後だが」
「だろーね。うーん…わかった、ちょっと探してくる」
気をつけろよ。と言う言葉を背に受けてそっちもね。と返しながら、脇差二刀を手に草鞋を締めた。二日酔いになっているところを襲われて全滅、なんて、間抜けすぎて聞きたくない。
それは彼らもわかっているんだろう。大丈夫だと返ってくるそれには、二日酔いの情けなさが残るものの裏打ちされた自信があった。
「臨也、出かけるのか」
「兄さん達がいないんだ。ちょっと外見てくる」
「総督達が?…そうだな、頼む。どうやら数刻前まで近くで大規模な戦闘があったらしいから」
酔っ払い達のために食事を作っていた一人がそう言って、沈黙が広がる。隊や部下を預かる攘夷志士の筆頭となりつつある彼らも、所詮は十代の子供で、好奇心は旺盛で、ついでに酒も入っている。
酔い潰れたはずの坂本がいないことから全員酔いはさめていると願いたいが、テンションMAXの予感は否めないだろう。つまり、
「……もしかしなくてもそれ見に行ったんじゃない?」
「…多分」
そういうことだ。
戦闘は終わっているとのことだったが、何もないとは言い切れまい。念のため火薬と針を数本装備に足して、臨也は今度こそと堂の入り口をくぐった。そんな時、
「お、いーざやー!」
階段を降り始めたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。
目を凝らして階段の下を見れば、しっかりとした装備で立っている四人。
見たところ怪我は無いようだ。それだけ確認して、ひっそりと息をついた。
手を振る姿の呑気なこと。部下が大小差はあれど心配したことを知らないで。
「何処に行ってきたんですか。探しに行こうとしてたところでしたよ」
「すまんな。少し見回りに行ってきたのだ」
「酔いも覚めたし、念のためにな。近くの戦場にも行ってきたが、ちょうど終わるところだったぜ」
「助太刀できるかと思ったけど、あんま必要なかったよなー」
「まぁまぁ、それが一番じゃき」
「……」
やはり、戦場まで行ってきたらしい。この人達の足ではすぐそこだろう。見回りというのは多少遠いが。
「…それで、酒を振舞ってくれたと言う御仁は見つかったんですか」
「いいや。あれだけいい酒持ってるから話はすぐに入るかと思ったんだがな」
「ま、毒が入って無くてよかったですね」
「お前毒見しただろ」
「当たり前です。得体の知れない野郎からそうホイホイとものをもらえますか。…酒と知れた途端俺を無視して宴会始めたのはあんたらだけど」
ジト目でにらめば、四人揃ってそらされる。あぁもう、戦場では頼もしいというのにこの落差は何なのか。あれかギャップ萌えというやつか。
「…ま、しばらく大規模戦闘が起こるような事前情報は入ってません。二日酔いなどはゆっくり治してもらうとしよう」
「だなー」
あと、様子見したにしてはやけに臭う血と硝煙の臭いについてもゆっくりと聞かないとね。
そうまるで明日の天気を聞くかのような調子で言われた言葉に、四人全員が動きを止めた。階段を上る内に自然と最後尾へ移動した、義弟を見る。表情は、笑顔一択だ。
「ね、義兄さんがた」
あ、ばれてる。と、戦場で助太刀した奇妙な集団を思い起こしつつ彼らはため息をついた。明らかに戦場に似つかわしくないような女や、制服のようにそろえられた黒衣の男ども、白い奇妙な生物、子供もいたしでかい犬もいた。どっかで見たことあるようなヅラに、天パ。
何処から説明すればいいんだろうと、堂の一室で尋問大会が開催されるまで彼らは話し合うことになる。
全て見終わった瞬間に思いました。あぁ、こいつら美味しいとこだけ全部掻っ攫っていきやがった。DVD特典期待してるぜ。と。
勢いだけで書いたのでおかしいところがあったらすみません。

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