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いよいよ折り返し(?)地点ですね…!
さて、本日は来神時代のお話。
戦争コンビ
「臨也…ちょっと金貸してくれねーか?」
「…は?」
喧嘩終わりの、屋上。とっくに三時限目が始まっていて、四時限目くらい出ようかと考えていた時。
隣からの言葉にそう返したのは、しょうがないと思う。
********************
「ったく…弁当忘れた上に財布までとは…珍しいねぇ静ちゃん」
「うっせ」
「手ぶらで来たわけじゃないんでしょ?まったく、どうやったら間違えるか不思議なもんだよねぇ」
「うるっせぇ!てかお前…いつの間に調理室のカギなんて取って来たんだよ」
「ん~?」
意気揚々と進む臨也の左手にあるのは、調理室、というタグが付いた鍵。職員室には寄っていないし、家庭科の教師にあってもいないのに。
「俺、先生に調理室の合鍵もらってるからね。先生も気前いいよね~。器具を壊したりしなければいいよってさ。だから静ちゃん、調理室は喧嘩禁止地域ね」
「…おぅ」
臨也は慣れた調子で、鍵を開ける。幸い、どこも今日は実習がなかったようで誰もいなかった。
家庭科の教師は、この時間授業だ。……静雄のクラスの。
「手前、エプロンとかも持ってきてんのか…」
「あれ、知らなかった?寝坊した時とか、俺午前サボってここで作ってるんだけど」
「は?!」
新事実である。というか、教師が調理室を提供するとは考えていなかった。の方が正しい。
「新羅やドタチンは知ってたから、静ちゃんも知ってるもんだと思ってたけど…すき嫌いないよね?あっても食わせるけど」
「……お、おぅ」
実は目の前の食材の中に一つか二つあるのだが、臨也の目が喧嘩をしている時の数十倍は恐ろしいので言えなかった。
「んじゃ、作りますかね~…できたら呼ぶから、寝てても外行っててもいいよ?」
「や…いる」
********************
…
……
………
「静ちゃん…何でそう俺の方をじっと見てるのかな?」
気味が悪いんですけど!?
…とは決して言葉には出さず、臨也はフライパンを操りながら横目で静雄を見た。
さっきから、そんなにお腹がすいたのかこっちをじっっっ…と見ている。うん。へたに喧嘩している時より怖い。
「いや……別、に」
嘘つけ!
と、これまた内心叫びつつも、臨也はできたばかりの炒飯を皿に盛り付ける。まったく、何なんだ?歯切れは悪いし、こちらから見ると目が泳いで変な方向を見ている。が、こちらがまた料理し出すとすぐにまたこっちを見る。
早くしろと言いたいのなら言ってほしい。
と、そこで、視界の端に人肌が見えた。
反射的に、持っていた菜箸の柄でパシリと叩く。
「ってぇ…お前、目が三つついてんじゃねェのか?」
「ハァ?というか、痛いわけないでしょ、ちょっと叩いただけだよ。全くもう…我慢というものがないなぁ静ちゃんは」
右手の甲には、菜箸で軽く叩いただけだから何も残ってはいない。しかし大袈裟に手をさする静雄に、臨也はため息をついた。
「あのねぇ、もう4回目だよ静ちゃん、つまみ食いしようとするの。俺に見つからないと思ってやってるわけ?」
「思っててもお前がことごとく見つけて叩くんじゃねぇか…」
「当たり前ですー。俺は偏食とつまみ食いは許しません」
妹にはそれを叩きこんであるため、あの二人は事前に聞くという知恵をつけたが。
「いいじゃねぇか一口くらい…」
「そう言って俺の弁当半分くらい食べ尽くしたよね前。俺、あの時購買まで走る羽目になったんだけど」
「………」
まったく、図体でかいのにうちの妹と同レベルとは、それはそれで凄いが何だか面倒なのが増えた感じでちょっと嫌になる。
「というか、まだ12時なってないんだよ?もうお腹すいたの」
「しょうがねぇだろ、寝坊して急いで来たんだから…」
ということは、朝飯抜きか。
ならば仕方がないのか、と、臨也はフライパンの中にあるエビ豆腐の中から、豆腐を小さく切って小さな小皿に盛って静雄に差しだした。
「?」
「つまみ食いはダメだけど、味見ならね…。しょっぱくないかな、と思って」
そういうと、あんかけと豆腐はするりとその口に消えてしまった。文句はないようなので味は問題ないらしい。と思っていると、眉間に皺を寄せながらも静雄が呟いた。
「エビ…も、食いたい」
「……はいはい」
皿に盛るのもめんどくさいと、菜箸で一つつまみ上げて口に放る。
静雄は驚いていたが、臨也としては雛にやる餌のごとく妹にやっているので、別にどうとも思っていなかった。
「どう?」
「……美味、い」
「そう?良かった。そこの電子レンジ、なっても出さないでね。熱いだろうし」
前々から思うのだが、ここの調理室は設備が良すぎる。
しかしまぁ、助かっているからいいかと判断して、臨也はできた料理を皿に盛り付けて行った。
「静ちゃん、つまみ食いはダメだけど、味見ならいいからね。俺に言えば」
「……おぅ」
バクバクと二人前を平らげる静雄を前に、臨也が呆れながらそう言ったのは、まぁ、また別の話。
あとがき↓
しつけというよりは、無言の攻防?実はこれ、とあるSSと繋がっていたり…。さっき思ったんですけどね。
これが、無自覚に箸で「あーんv」をやる始まりだったのです…。静ちゃんは何かおかしいと思っているようですが、臨也さんは長年の経験というか、行動のせいか自然体(?)。