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そうだね、あれは確か…二年の冬だったね。年末か年始かは忘れたけど…。先生から進路希望の紙を渡された時は迷ったなぁ。進学してもいいって親には言われてたけど、特別やってみたいこともなくて。
で、放課後に四人で話してたんだよね。
「本当に、なんだかんだいって仲良いですよね、四人とも」
「新羅はもう出した?進路の紙」
「あぁ、僕はね~。とりあえず医者とは書いておいたけど…。別に免許なくてもできるしなぁ」
最初にこたえた新羅は、まぁ、当然と言えば当然の進路だったよ。父親も医者だし、俺や静ちゃんの手当ても高校時代から凄く手慣れてたからね。誰が言うでもなく、新羅の進路は一本だった。
「そういう問題じゃねぇだろ」
「え~そう?じゃあ門田はどうなのさ。手先器用だし、職人とかさ」
「あ~ドタチン伝統工芸のところに弟子入りするイメージあるかも」
「あ、いいね!人間国宝になってよ」
「んだそりゃ」
ドタチンは…まぁ、結局何を書いたのかは分からなかったけど、その通り職人系だよね。手に職つくと本当にこういう時楽なんだなって思ったよ。まぁ、そのまま苦労人ポジションもしっかり維持しちゃってるけどさ。
「臨也さん…それは言っちゃだめですよ…」
「というかなんだ?臨也、お前まだ出してないのか」
「提出明日だよ?」
「ん~~~…。親からは進学してもいいって言われてるんだけどさ、迷ってるんだよ。妹二人もまだ小学生だろ?だったら最低でも東京からは出られないし、親が帰ってくるとしたらいいけど……進学したとして、何をやればいいのか…」
「あぁ、なるほどね」
「それでか」
手には、三つの空欄。一つ書くのにも迷うってのに、どうしろって言うんだってほんと思ったよ。まぁ、三つ目は最初から決まってたからね。後の二つを埋めたかったんだ。
「それこそほら、『人間大好き』『観察大好き』な臨也なら、大学で心理学とかでも面白いかもよ?」
「あぁ、そういう手もあったか…。面白そうだね。じゃあ、とりあえず大学進学…。う~ん…」
「まぁ、そう難しく考えなくてもいいだろ。一応転科とかもできるんじゃないのか?」
「それは大学によって違うんじゃないの?俺もそこは調べてないんだよねぇ…」
第一希望を大学進学で埋めるとしても、第二希望が埋められなくてね。迷ったなぁ…。
「そ、それで…どうしたんですか?」
そしたら、ふと俺の机の上にあったバスケットを見たドタチンがね、そういえば。って呟いたんだ。
「お前、料理得意なんだし、調理師専門学校とかどうだ?専門的なこと勉強して、とか」
「あぁ!それも面白いよね」
「ちょっと、そんな勝手に…」
「でも、進路としてはいいんじゃないのかい?好きなことを職にするってのは結構難しいことなんだよ?臨也。君だったら、絶対素敵なシェフになりそうだし…パティシエでもいいかもね!」
新羅はもうその未来を想像してるのか、そしたらおまけしてね!なんて言って来たんだよ。まったく、調子がいいのかポジティブなのか…。
「う~ん…」
「まぁ、いいんじゃないか。俺が言っといてなんだが、お前のは美味いし」
「よし、じゃあ臨也の第一志望は調理師専門学校ね!」
「へ?って、あー!よりによってボールペンで書きやがって!」
「良いじゃないか、まだ二年だよ」
ま、結局そのまま出したんだけどね。まぁ、それでも楽しいかなって思ったし。
「そ、それで、あの…」
「ん?」
「静雄さんは?」
「え?あ、あはは。静ちゃんはその時ねぇ…」
「そういえばさぁ、臨也」
「ん~?」
「既に諦めちゃってるみたいだけど、君を抱き枕にして寝てる静雄をさっさと起こさないと、帰れないんじゃないかい?」
「……そうだね」
********************
「…というわけでまぁ、静ちゃんは何故か寝てて、聞けなかったんだよね~。まぁ、俺らが参考になるとは思えないけど、まだ君たち一年生なんだし、やりたいことを書くのが一番だよ。あと、興味のある事」
「そうですよね…」
池袋西口公園。
仕事終わりにのんびりとお茶を飲んでいた臨也は、待ち合わせていた…というより、紀田正臣経由で呼ばれて、そこで待っていた。
現れた三人に、はい、お疲れ様。とプリンを手渡して。
「ちなみに、君達は何に興味があるとか何がしたいとかあるの?」
「特には…」
「わ、私も…」
「…俺は、ちょっとはありますけど、保留します。というか、臨也さん」
早くも食べ終わったのか器を洗って返してくれた正臣は、それを渡しながらふと、今までの会話で何かひっかかったらしい。どうしたのかと聞くと、少し眉間に皺を寄せた正臣は少しどもった。
「え、あぁ、あの……。静雄が何故に臨也さんを抱き枕にしてたとかは聞きたくないんで…」
「あ、そこかと思ってた。俺も未だに分かんないんだけどねぇ。で?」
「(わかんないのか…)えっと、それでなんで今、情報屋なんてやってるんです?専門学校行かなかったんですか」
その問いに、他二人もそう言えば。という顔をして臨也を見る。臨也は反対に、眉間に皺をよせて不機嫌そうな顔をしていた。
「あれね~…俺もさ、受けてみようと思ったんだよ。願書と資料取り寄せて、新羅道連れにオープンキャンパス行ってさ?楽しそうだし、本場に行ったらもっと色んなことできるし良いな~ってさ・…」
「そ、そうなんですか…」
何やら声のトーンが低くなっていく。ついでに、周囲の気温が何だか低くなるような感じがして、三人は後ずさりたくなった。しかし、興味はある。恐怖より好奇心が勝った瞬間だった。
「それなのに…あのバカが…!!」
「「「あ、あのバカが?」」」
「願書は予備も含めて折角書いたのを破り捨てるわ、受験前に喧嘩を売ってくるわ、そのせいで入院だわとこっちの都合はお構いなし!悪びれた様子もなく卒業式に出やがって!!ほんと、あの時色々やったのはその報いだと思ってるよ!」
その渾身の叫びと、『卒業式』という単語に、「あぁ、『あのバカ』って平和島静雄かぁ」と三人は納得した。なるほど、そんな経緯があったのか。確かに、流石の折原臨也といえど、進路関連でそこまで邪魔されれば卒業式の日にやるだろう。というか、絶対に、やる。そして実際にやっている。
「おかげで?!俺は趣味と実益を兼ねた情報屋をやってるけどさ、静ちゃんなら自分への迷惑度とかを考えて絶対に邪魔をしないとか思ってたのに!それくらいの計算もできないほどの単細胞だったのあれ!?」
あぁ、そういう想像もできたのか。確かに、そうなったら池袋は平和極まりない、今を見れば不気味なほど普通の街だったに違いない。
三人は、少しだけ静雄を恨んだ。
と、その時。
「だぁれが単細胞だと?ノーミーむーしー」
「……げ」
「し、静雄さん!」
不機嫌そうに現れたのは、噂をすればなんとやら、静雄だった。
しかし、怒り狂っていたのかテンションを下げられないのか、臨也は静雄に近づいて行ってゴスゴスと静雄を叩き始めた。ちなみに、素手で。
「ぁあ?」
「俺の高三の時の進路を尽く断ちやがった静ちゃんをバカだって言ってたんだよ!大体何!?あの時の会話聞かず寝こけてたくせに何で俺が専門学校の資料取り寄せたとか知ってたわけ?新羅?それともドタチンか?!」
「ちょ…落ち着け」
「ついでに忙しい時期に限って喧嘩ふっかけて邪魔してきやがって!新羅は笑ってるしドタチンは呆れてるし!言え!もう時効だろ、何で邪魔した~!」
……ん?
その言葉に、来良の三人は首をかしげた。他の二人は、ただ見てただけなのか。
そして、忙しい時期をしっかり見計らったのか。
「え、いや…あれは新羅が悪ィ!」
「理由を言えバカ静!」
「いや…誰が言うか!あれは新羅が悪いんだ!」
「意味が分かんないっつの!よし、じゃあこれから新羅に聞きに行こうか。セルティにも協力してもらおう!」
「はぁ!?ちょ、待て」
「じゃ~話してくれるの~?」
「………………話さない」
ヒートアップしていく言い争いに、三人はあぁ、と原因を悟った。何故に臨也さんは気付かないのだろう。
……嫉妬か。
あとがき↓
遅れて申し訳ない!!そんなに進路というか、将来とか語ってませんが…。この話だったら、臨也が料理人目指しても違和感ないと思って(汗)