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銀時は、目の前にいるその青年が信じられなかった。
前にあったのはいつだろう。確か終戦後、仲間の無残な姿をこの江戸で見て、そして、歯を食いしばって、高杉を追うとこの江戸を出ていった、その日だった気がする。
あれから何年経っただろう?隣りにいる坂本は、生きていたのかと呆然としながらも、嬉しそうに声をあげる。
後ろで神楽と新八が知り合いかと尋ねてきたが、銀時には応えることができなかった。
幼い頃、あの萩で短い間だが共に育ち、自分達と坂本を出会わせた、この日の本一と言われる腕を持った、否、持つ、情報屋。
「リン……!」
「お久しぶりです、銀さんに、辰さんも」
**********
久しぶりの再会は、かぶき町のど真ん中、それも、甘味処の前。もう、買い物は済んだのだろう。臨也の手には袋が握られている。
まぁ、それはいい。しかし、その、なんだ……。
「リン~?」
「はいっ?」
「お前さぁ…
なんで、そんな微妙な位置にいるわけ?」
臨也は、10mほど銀時達と距離をとっていた。
普通、再会したらこう、飛びついてきたりとかしてくるんじゃねぇのかな…。と、ちょっと昔に思いを馳せれば、情報を入手してきてご機嫌な臨也が、鬼畜なことを桂と高杉に提案しつつ、銀時に抱きついている絵が…って、なんだか感動的じゃない。
しかしまぁ、ちょっと年下の青年は、銀時からしてみれば弟みたいなものだったのだ。
ので、あからさまに距離をとられると寂しい。
「おーい、リン~?臨也~?何でそんな微妙な距離とるわけ、お兄さんショックなんだけど」
「へっ、いや、え、その、あ、あはは…」
「あ~。そういうことかの」
「?」
銀時が一歩踏み入れれば臨也が一歩後ずさるという、お互い、本気を出さずとも間合いに入る距離だが微妙な距離を保っていたそれに、入ってきたのは坂本だった。
「ほれ金時。リンは…あ~…その、のぅ、昔っから苦手なもんなったじゃろう。それでじゃ」
「苦手なもん?」
「それだけは無理だと、いっつもいっちょったろうに。忘れたか?ほれ、それで、金時に会えて嬉しいの八割、でも何だか近づけないので二割ってとこじゃろ」
なぁ?と坂本が臨也に笑いかければ、物凄い勢いで首が縦に振られる。
その様子に、臨也に嫌いなもの…?と銀時は回想を始めた。
自分に関係があるのだ、この服装には臨也の嫌いそうな要素はないし、木刀は、別に大丈夫。というか、臨也の嫌いなもの…?嫌いな…
「……あ、目か」
「…銀さん?」
「そういやお前、『死んだ魚の目』、苦手だって、尾頭付きの魚はどんな奴でも食わなかったよな」
新八の訝しげな声に、銀時は答えられなかった。ただ、視線を向けて少し頷く、意識はすべて、臨也に向けられていた。
な。と念を押すように問えば、少し申し訳なさそうに頷かれる。なるほど、自分の目が、それで臨也は近づいてきてくれなかったのか。
そう思って、銀時は少しだけ、切り替えた。
無気力な自分を、ダラダラとしている自分を、昔を、攘夷戦争時代ではなく、それよりもっと昔を、思い浮かべて。あるいは、刀を握り、共に走っていた時代を思い浮かべもしながら。
そうやって笑いかければ、周りからは絶対に分からないだろう変化に、臨也はパッと顔を明るくする。
そして、昔のように走ってきた。
「久しぶりっ!銀兄!」
「おぅ!」
腕に入れば、後は借りてきた猫だ。
ごろごろと、気位の高い猫が懐くように笑うので、銀時としては笑うしかない。これより気位が高いのが、ちゃんと京都にもいたりする。
「…てか、何でお前江戸にいんの?」
「え、今更」
「ははっ、相変わらずじゃの~。甘味屋はいらんか~?リンも金時も」
「だから銀時だっつの」
あとがき↓
そう言えばっ!と思って書きました、後でちゃんと…書けたら、いいな。