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デュラララ!!の二次創作小説同人サイトです。
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    第六話。

    再び静ちゃんサイド。というか、引き続き静ちゃんサイド。
    セルティにかっこ良く語ってほしくて…!


    『if.~La bonne médecine a un goût amer~』





    夜の、池袋。
    その誰も入らないような路地裏の更に奥に、池袋の都市伝説である『首なしライダー』と、もう一人の、ある意味では都市伝説である『喧嘩人形』がいた。

    『へぇ…そんな男がいたのか』
    「あぁ。俺とは違って、そんなに周りに迷惑をかける力じゃねぇからかもしれねぇが…。あそこまでまっすぐに言い切る奴は初めてみた」

    静雄は、今日の昼間にあった、六、と呼ばれていた青年のことをセルティに話していた。
    そして、追いかけて行った池袋駅中央改札前で聞いてしまった会話のことも、話してみようと思っていた。
    しかし、口をついて出た言葉は全く違うもので。

    「臨也の奴、今どうしてるか分かるか?」
    『え?…仕事が忙しいと…聞いているが』
    「そう…か」
    『臨也が、どうかしたのか』

    セルティの問いに、静雄は苦笑した。正直に言っていいものか、少々迷う。
    しかし、セルティなら何か知っているかもしれないと、その青年達が臨也の名前を出していたことを言った。

    「何か、情報屋仲間っぽい口ぶりでな…。親しそうだったし…」
    『臨也も、仕事上の付き合いとかはあるだろう。それを言ったら、お前達だって、私には仲がいいように見えるぞ?』
    「………そう、なのか?」

    きょとん。とした顔をした静雄に、セルティは何も言えなくなった。
    首があったら静雄にはばれていただろうが、きっと今、セルティの顔は呆れかえったような、しかし諦めたような顔をしているのだろう。

    やっぱり、無自覚と言うか、何というか…。全然気づいてないんだな…。

    長年喧嘩をしてきたせいもあってか、当事者二人の感覚は少々どころかかなり麻痺しているらしいと、セルティは分析した。
    コーヒーの豆を届けに行ったあの時から、どれくらいたっただろうか。短いようで長いその時間は、確実に自分を含めた、何も知らなかった池袋の住人の認識を変えて行く。
    以前、仕事であった、新羅達の同級生だったという青年は、静雄達が卒業式に喧嘩別れしたことをひどく残念がって、そして、最近仲良くなったことを、『仲直りできたんだな』と手放しで喜んでいた。
    それを新羅に話したら、『あの頃から、周りからは公認だったんだよあの二人』と、事も無げに告げられたのを覚えている。

    『…あぁ、私は、お前達の仲が悪いようには、見えないな。何だかんだで八年も関わって、今も会うってことは、仲が悪いとは言わないんじゃないか?』

    PDAを素早く打って、そう静雄に返す。
    セルティが何も知らなかったあの時から、それでも、反発しあってもこの二人は同じ場所にいる。それは、恐らく変わっていない。

    「…でも、よ」
    『?』
    「そいつ、言ってたんだ。『臨也の仕事を手伝う』って。あいつは、俺が落ち込んでたりいらついたりしてると、喧嘩吹っ掛けてきたり食いもんで釣ってくれるけど…よ。俺は、あいつが困ってたり忙しくしてる時、何もしてやれねぇんだな。って…」
    『静雄…』

    食べ物で釣られているという自覚があったのか…。って、いやいや、そうではなく。そんな風に思っていたのか…。

    『別に、静雄ができることはあるんじゃないか?』
    「?」
    『臨也の仕事が終わって、また池袋に来た時、労わるような言葉でもかければいい。【お疲れ様】って言ってもらえるだけでも、きっと嬉しいと思うぞ』
    「……そうか?」
    『あぁ。そうだ』

    納得がいかなそうな顔をしている静雄だが、先程よりはましな顔をしているとセルティは思った。
    何もできないと思う人間はいくらでもいる。だから、その中から、自分ができることを見つけることが重要なんだと、以前臨也は語っていたことがある。
    臨也の演説(?)も、聞いていて役に立つこともあるものだ。

    「…でも、やっぱ心配だし、行ってくっかな」
    『…?』
    「臨也んとこ。あいつ、また睡眠薬飲んでんじゃねぇか?」
    『え?あぁ、いや、今は大丈夫だそう……あぁ。行かない方がいいと思うぞ!?』
    「?」

    臨也の家に行く。
    そう言われたところで、大丈夫そうだが、一応行ってみた方がいいんじゃないか。と続くはずだった言葉を、すかさず打ち直した。
    今、臨也は『折原臨也』ではないのだ。厳密にいえば、男ではない。だが。

    「いや、でもよ…」
    『いや、仕事の邪魔をして、怒られたら元も子もないだろう。助っ人が必要なくらい忙しいんだったら、行ってもやっぱり怒られるんじゃないか!?』
    「……どうかしたのか?セルティ…」
    『い、いやその…』

    自分が嘘をつきにくい、というか、嘘が下手だということを、セルティは重々承知していた。しかし、隠し通した方が臨也の精神的ダメージが小さいことももちろん知っている。静雄が会ったというその二人は、きっと臨也が信頼して、というか、仕事を捌くために呼んだのだろうと当たりをつけ、セルティは胸中で恋人に深く深く謝った。



    『実は、忙しい臨也を茶化した新羅が、腹にボディーブローをくらい、顔にも拳をお見舞いされてしまったんだ!』



    その言葉に、静雄の動きがピタッと止まる。
    基本的に、臨也は静雄以外に喧嘩はあまり売らないし、門田や新羅には売ったこと自体ない。精々口喧嘩程度が限界で、殴る、殴られるということはなかった…はずだ。
    その臨也が、新羅を…?
    ちなみに、セルティは臨也が殴ったとは言わなかったが、静雄は見事に誤解していた。

    「新羅は大丈夫なのか…?」
    『あぁ、あれは…その、自業自得だから気にしないでくれ。二人もちゃんと仲直りしたから!!』
    「そう、か…。わかった。じゃあ、やっぱり行くのはやめた方がいいか。キレられるのは御免だしな」
    『あぁ。そうした方がいい』

    メールで、『無理はするな』と一言だけ臨也に送った静雄は、明日も仕事があるから。と帰っていく。
    その姿を見えなくなるまで見届けて、セルティは深く深くため息をついて脱力した。

    しばらく自分も、静雄とあまり接触しない方がいいのだろうか…。

    確実に、墓穴を掘るのは自分だろうと、セルティは新羅に解毒剤製作速度を速めてもらおうと心に誓って、愛馬を走らせたのだった。





    あとがき↓
    かっこ良いセルティを書こうとしたのですが…最後、ちょっと違くなってしまいました。
     

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