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そういえば、mixiやってる方っていますかね?あっちではこっち方面は隠してたり、ほぼROM専だったりしますけど…。もしやっている方がいたら探してみてくださいね。めっちゃ簡単です、名前おんなじですから。
さて、先日の本業妄想、続き!!
情報屋ファミリー
「沙樹、後はないよな?」
「うん。家具とかは、もうあっちにあるって言ってたから…これで全部だよ」
沙樹と正臣は、数か月ほどとはいえ過ごしたそのアパートの中をぐるりと見渡した。
短い間だったが、それでも、二人で過ごした。思い出が詰まった場所から今日、二人は出る。
行くのは、臨也の本来の家で、池袋でも新宿でもなく、世田谷。その中でも、なかなかの一等地。つまり、高級住宅街。
住所を教えられはしたが、まだ言ってはいない。ただ電話で、「二人の部屋も、ちゃんと用意してるからね。大丈夫、俺や波江の部屋からは離れてるから!」と、怪我人とは思えない明るい声で言われ、怒鳴り散らしたことしか覚えてはいない。………断じて、その後に言われた「一度行って道を覚えた方がいいよ」という言葉にも勢いで反発してしまったわけではない!
「…正臣?」
「えっ?あ、あぁ。ごめん。タクシー来た?」
「うん。ほら、行こう!」
差し出された手を掴み、正臣はそのドアを開けながらも、もう一度部屋の中を見る。
「――――――――――…ありがとう」
短い間だったけど、楽しかった。
**********
「あら…もう出たのね。予定より早いかしら…」
近くのスーパーでの買い物帰り。
波江は、沙樹からのメールで少しだけ歩調を速めた。
「今日の夕飯は…引越しそばかしらね。あと、一応食べやすいもの…仕事の終了祝いだって送られてきたものがあったわね。リゾットにでもしようかしら」
情報屋であろうが無かろうが、臨也の交友関係は広い。それはもうだだっ広い。
むしろ、臨也の本来の職業を知っていて、彼らも『そう』であったり、それを面白がって共にいる者もいるので、情報屋の時に築いた関係はあまり断ち切られていはいない。
ただ一つ、『池袋』を除いて。
「学生の時からこの仕事って…言ってたから、やっぱり池袋には行きたくないのかしら」
この八年間、ほぼすべての人間を騙し続けた折原臨也。
その中には、素で親しくしていた人間とて含まれる。
警察であって警察ではなく、司法を司りながら司法に反した生き方をしてきた男。
裁こうと思えば裁ける罪。しかし、それは彼自身が望んで侵したわけではない罪。
裁けないゆえに、償う術もないその罪。
それは自分もまた、同じといえば同じことか。
「……あら、もう来てたのね」
「波江さん」
「すみません、思えば、鍵持ってなくて…」
考え事をしながらの道は案外早く、すぐに家の前についた。
その前に立っていた二人は、少々戸惑った顔をしている。
「どうかした?」
「え、あぁ、いえ…」
「………ほんとに、ここっすか」
「えぇ。そうだけど……………まぁ、豪華といえば、豪華よね」
少し大袈裟な、警備会社のステッカーの貼ってある門を開ける。
その門も、その中の庭や家も、周りの家とは少し違って純和風となっていた。
平屋のそこは、異様に……広い。
敷地面積も、絶対に周りの家より広いはずだ。
「……俺ら、これからここで住むんです、よ、ね」
「えぇ。畳じゃない部屋もあるわよ。臨也を布団に寝かせるわけにはいかないから。まぁ、外見はこうだけど、中は洋式もあるわ」
「いや、そう言う問題じゃなく……」
「臨也の部屋は、一番奥の北側よ。貴方達は南にある、手前の部屋。私は向こう側ね」
歩きながら説明する波江の言葉を必死に覚えつつ、二人はキョロキョロと辺りを見渡していた。
あまり、臨也に和風のイメージがなかっただけに、珍しい。
「荷物が届くまで時間もあるし…見て周ってきたらどうかしら。何かあったら呼ぶわ」
小さな子供のように辺りを見渡す二人に波江がそう言うと、沙樹も正臣も、その瞳をいっそう輝かせた。
**********
「こっちが…北側、かぁ…本当に広いね」
「迷わす気か…!?」
時折、外を見て今どこにいるのかを確認しながら歩いていた二人は、ほぼ迷っていた。
とりあえず、この家に初めて来て迷うなという方に無理がある。
「…あ、ねぇ正臣、ここ」
「ん?」
「臨也さんの、部屋じゃないかな」
沙樹が指を指したそこには、木のドアがあった。渡り廊下の向こう、鍵がかけられるタイプ、しかも、ここは家の北側なので、書斎か、臨也の部屋のはずだ。
「…入って、みる?」
「や、でも、鍵かかってるんじゃないか?」
「その時はその時、後で波江さんに聞いてみようよ」
「………………なんでこう、俺の周りには隠れアグレッシブが多いかなぁ…」
意気揚々と、しかし静かにそのドアを沙樹が開ける。
「…鍵、かかってない」
「え?」
スッ、という音がして、そのドアは横に、ゆっくりと開かれる。
「……あれ、誰?波江?」
ドアが開くとともに、その室内から、聞き慣れた声がした。
瀕死の重傷を二週間前に負い、三日間ほどICUのお世話になり、その二日後にやっと目を覚ました、今も絶対安静が必要なはずの、その、人に似た…否、その人の、声。
「い、臨也さん!?」
「あれ、正臣に沙樹…。もう来てたんだ。お帰りなさい」
慌てて正臣が部屋に入ると、北側と言えど、少し角部屋のように出っ張って作られ、太陽光がめいいっぱい入ってくるようになっている作りのその部屋。その、南側、大きな窓を全開にしたすぐそばで、背中とベッドの間にたくさんのクッションを入れた形で、ベッドに横たわっている、その人がいた。
「ほんとに、臨也さん…」
「?」
穏やかに笑うその顔に、優しい光が差し込んで。
あとがき↓。
前篇、かな?ちょっと続きます。