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部活に行き、ついでにエビチリラーメン食べて帰ってきちゃいました。すみません。
さて、10話…ですね。静ちゃんと新羅。
静ちゃんがやっと前に!!いや、止めていたのは私です。
「……なぁ、新羅」
「ん?どうしたんだい静雄。抜糸はまだ無理だよ」
「ちげぇよ……。その、よ」
「うん?」
その日は、セルティがいなかった。
臨也やその助手たちからも連絡がなく、順調に、しかしゆっっっっっくりと解毒剤を作っていた新羅は、はっきりいって油断していたのかもしれない。
「臨也の奴…従姉妹とか、親戚が来てんのか?」
「は?」
「いや……その、池袋に」
その時、新羅はあからさまに、『ヤバい』。と、顔に出していた。
そして、長い付き合いである静雄がそれに気づかぬわけでもなく、すぐに知っているんだなと返すと、焦った新羅はわたわたと手を振った。
「い、いや、私は知らないよ!?大体、臨也自体しばらく池袋に来てないみたいじゃないか!」
「そうかぁ?俺が見てねぇだけで来てんじゃねぇのか」
「何を言っているんだい、静雄は臨也が来たらすぐにわかるじゃないか!」
「あいつが気配消してたらできねぇよ」
「…………え、なに、臨也って、わざと気配消してなかったの?」
「んだよ、知らなかったのか」
「いや、そう言われても…僕は君達と違っていたって普通の一般じ…痛い痛い痛い止めいたたたたたたた」
おそらく、世界広しと言えど新羅と門田ぐらいしか言えないだろうセリフに、イライラの募った静雄がぐんぐんと胸ぐらをつかんで新羅を揺らす。
「ちょ…脳が揺れる壊れる!!」
「壊れやがれ」
「ひどっ!!」
なんだろう。良かれと思ってしたのに、臨也が女性になってから加速度的に不幸が増えている気がした。
諦めて数分されるがままに揺らされていると、飽きたのか静雄が白衣から手を離す。
何度か深呼吸をして、新羅は呆れたようにため息をついた。
「まったく…そんなに気になるなら、本人に直接聞きに行けばいいじゃないか」
「ぁあ?」
「い・ざ・や!マンションの鍵、持ってるんだろ」
静雄が、臨也のマンションの鍵を持っていると知ったのは、ついこの間だ。
妹達にでさえ渡していない鍵を、まさか静雄にやるとは思っていなかったのだ。
「…もってっけどよ、忙しいからくんなって言われた………」
「……そう」
何か、主人に構ってもらえない犬みたいだな…
「今ろくでもねぇこと思っただろ手前」
「え?気のせいだよ。でも、それだけじゃないだろ?今までだって、無理してるんじゃないかって、夜に様子見に行ってたじゃないか」
何故知ってるんだ…?と思いつつ、静雄はセルティから言われたことを新羅に話した。
セルティ…君は優しいね。静雄を慰めてあげるだなんて…でも、まさか臨也が新宿から出るなんて…
新羅は既に、静雄があったというそっくりな少女が臨也本人であると確信していた。何故ならって、臨也から波江に怒られた~!!と、泣きながら電話をもらったからである。セルティも大層心配していたので、今日の帰りに新宿に寄ってくると言っていた。
「…行って…いい、の、か?」
「行ったら……あぁ駄目かも」
「?」
「臨也のこわーい助手に追い返されるよきっと」
その時、静雄の脳裏をよぎったのは、やけに自分に敵対心を向けてくる美女の姿と、辛辣なその言葉の羅列だった。
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「っくしゅ……くしゅっ」
「波江?」
「ん?波江さん風邪?薬とろうか」
「……いいわ、どうせ噂よ。……悪い方のね」
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「……君も、やっぱりあの秘書は苦手なんだねぇ」
「『も』って…会ったことあんのかよ」
「この間ね…まったく、セルティに勝るとも劣らない拳を受けたのは久しぶりさ」
「何したんだ手前…」
ははははは。と、新羅は笑ってごまかした。今ここで喋れば、女性陣+臨也のトリプルコンボで意識を飛ばすことは決定となるからである。
だが、進んでほしい。八年たっても進展しないこの二人の為に、そして、自分達の精神の安定の為に。
………ついでに、面白そうだし。
「…で、よ。セルティは待ってたらいいって言うんだけど…」
「…心配だから、会いたいって?」
「だ、誰も心配だなんて言ってねぇじゃねぇか!」
会いたいと言うところを否定しない静雄に、新羅はそっとほほ笑む。心の中で悪魔のごとく笑いながら。だが。
「とりあえず、メールすればいい。それに、臨也の助手は夜には帰るじゃないか。臨也のところに来てる客だって、明日には帰るらしいよ」
「…………そう、なのか」
「そうそう。僕から電話しておこうか?ちょうど良いし、薬届けてよ。睡眠導入剤」
ひらひらと掲げた袋は、臨也が服用(愛用?)している、新羅特性の睡眠導入剤だ。
また使ってやがったのか。と静雄は舌打ちしつつ、それを奪うように受け取る。
会う口実ができたのは行幸だ。
「砕いて捨てたりとかしないでよ」
「わーってる。……てか、ホントに聞いてないのか。あいつがどうしたのかとか。……門田とかも、しらねぇみたいだし」
「……あ~…や、知らないと思うよ。今、臨也大変だし」
「…?」
「いや、うん。門田には余計に言えないんじゃないかなぁ…」
「……おい」
「狩沢さんだっけ?あともう一人、彼らに知られたら大変だろうしねぇ」
「…おい新羅」
「それに門田は心配性だ。きっと大変なことに…」
「新羅、手前…さっき、何で臨也がブクロに来てねぇのか知らないって言ってたよなぁ…?」
「……………………あ」
その瞬間、静雄のこめかみに何かが浮かぶのと共に、新羅はとんでもない墓穴を掘ったことを理解した。