お久しぶりです。今月中に一本くらいあげておきたいなぁと考えてました房藤です。来月からは流石に忙しいので…。
もう少しで新学期も始まりますが、まだまだ大変な日々かと思います。それでも、「あの時は」と、どんな気持でも語れるようになりたいなと、個人的に思っております。
さて、そんなわけで、あんまり事件的なものを書くのはダメかなぁと思ったのですが、そう考えるとずっとその考えで行っていつまでたってもかけないと思ったので…。そういうわけで、久しぶりに刑事パロで行かせていただきます…。
俺の名は、平和島静雄。元はしがない交番勤務の警察官で、このまま大きな事件も起こらずに…とはいっても、池袋の街じゃ俺が目を光らせているってだけで交番の近くでバカやる奴はいなかったんだが、まぁ、そんな感じでのんびり過ごせりゃいいと思ってた。
しかし、しかし、だ。
「おい平和島、始末書書き終わったか?」
「ッス」
俺は今、警視庁で刑事をやっている。一年前、交番で喧嘩やってるバカなチンピラをのして署まで連れて行ったと思ったら、それが指名手配犯だったという、何とも微妙な経緯だ。
その後、色々な方面から恐れられるのを使って暴力団対策課にいたりしたのだが、つい四月、よくテレビドラマや小説などで見るような「刑事」…といっていいのかはわからないが、刑事部捜査一課に異動された。異動の経緯はわからないが、そこに中学時代の先輩である田中トムさん(警部補)がいたのは嬉しかった。
始末書を書く回数は増えたものの、先輩たちにもフォローしてもらって、何とか刑事生活を送っている。
ちなみに、今回の始末書は犯人確保に使用してしまった標識…などの、器物破損等におけるものだ。チンピラどもへの半ば脅しのような聞き込み調査は、あちらもあちらだから、ということで流されている。
「どーにかしねぇとなぁ…」
携帯できる武器があればいいのだが、拳銃は苦手だし、そもそもおいそれと携帯していていいものではないと思っている。というかそれ以前に、拳銃構える暇があったら殴りに行った方が建設的だ。そっちの方が早い。
そんな考えのもとに前の課にいたときは、あまりの腕っ節の強さから機動隊やSATに行った方がいいんじゃないかとも言われていたしそんな声もかかっていたが、我慢が聞かずに一人で突入してしまう独断専行の可能性が高いということで、命令系統に組み込めないという観点から却下されていた。もちろん、自分としても遠慮していた。自分の力を発揮できるだろうとは思うが、味方にも間違えて殴ってしまいそう、と考えてしまうのだ。トムさんのように、暴れだしたら離れてくれるというわけでもない、部隊で行動するような場所に、力の制御もできていない自分が入るのは自滅行為だ。
「おい、大丈夫か?」
「あ、は、はい。これで最後っす」
「よし。んじゃ、田中についてちょっと行って来い」
「あ、はい…。って、どこにっすか?」
「ん?あぁ、お前、もしかして行くの初めてか?まぁ…行けばわかる。さっさと行って来い」
田中は食堂だというと、課長は書類を持ってどこかへ行ってしまった。上へ報告に行くのだろう。あれの五分の一は、多分俺の始末書だ。
何とか暴れないように、と思っても、暴れてしまうのだから仕方がない。トムさんが抑えてくれることもあるが、それでも怒りを抑えられなくて、剣道や柔道で相手をぼこぼこにしてしまったこと数十回…。一時期、立ち入り禁止を言い渡されそうになったほどだ。
「トムさん!」
「お、来たな~静雄」
食堂では、すでにトムさんがコーヒーを飲みながら待っていた。慌てて小走りで寄ると、慌てるな、と苦笑される。
「で、どこに行くんすか?」
「あぁ、課長は言わなかったのか?」
その言葉に頷くと、まぁそりゃそうかと笑って、トムさんは口を開いた。
「端的にいやぁ、科捜研に向かってる」
「科捜研?鑑識じゃなくてっすか」
「あぁ、会おうと思ってたやつが今、科警研から戻ってくるって電話はいってな。今日なら少し時間がとれるって聞いたもんで、話聞きに行こうと思ってよ」
てっきり出ると言われて外かと思っていたのだが、仕事関係らしい。コーヒーの缶をゴミ箱に入れて、歩き出した。歩きながら話すということらしい。
「この間の通り魔事件、聞いてるな?」
「はい。俺らも捜査、参加するんすよね?」
「当たり前だ。昨日で俺らが担当してたものは終わったから、今日から入れって言われててな。それで、資料とかももらってたんだが…」
「少しは聞いてます。犯人の目星、ついてるんすよね?証拠も…」
「…その証拠が、証拠じゃなくなった」
「……は?」
思わず、その言葉しか出ない。謝ると、まぁ仕方ねぇよと笑ってくれた。
「正確には、調査の結果その証拠が潰されたってこったな。逆に被疑者の無実を証明しそうになっててよ…。んでまぁ、それについて詳しく聞きに行くってこった」
「聞きにって…」
「鑑識課だ」
「鑑識?何だってあいつらに…」
鑑識というと、悪いが地味なイメージしかない。鑑識とあまり接触したことがないからかもしれないが…。テレビで見るような、格好いいという印象はあまりなかった。まぁ、鑑識課に行ったことがないからかもしれないが。
先入観は悪いと思いつつも、現場であっても話すこともないために、どう言う奴らなのか分からない。
「鑑識をバカにするなよ。あいつらのおかげで、俺達は犯人に繋がるものを掴めるんだからな。……その鑑識に、一人の男がいる。お前は会ったことがなかったな。まぁ、先日まで有給休暇で、妹達に旅行に連れて行かれたとかでいなかったからな。で、科警研からも戻ってきたって、そいつの同僚から連絡が来たってわけだ。正式には鑑識課、科学捜査研究所の男なんだけどな」
「……はぁ…」
そう言われても。そんなに凄い奴なんだろうか?トムさんの様子からして優秀そうだが、そう言う奴ほど頭が固そうだ。しかも、自分が嫌いな説明をグダグダとしてきそうな気もする。キレないように頑張ろう。
「そういや、お前と同い年だったか?24だしな」
「………はい?」
同い年?その男が?
「まぁ、変人と名高いが、現場の俺らからすりゃなかなか面白い奴だぜ。おーい、入るぞー!…ってなんだ、他にもいたのか」
「あぁ田中警部補」
「お土産あるってうちの部下から聞いたんでね」
「だからって交通課が…」
そこにいたのは、テーブルを囲む数人の壮年の男達。見たことがある。交通課の警部や警部補だ。
「いいじゃねぇか。なぁ?警視殿」
「調子いいなぁもう…」
その言葉とともに、交通課警部の声に応えて奥から出てきたのは、白衣にメガネをかけた自分と同年代くらいの…青年。
「………警視ぃ!?」
この目の前の男が、警視!?警視っていえばあれだ。自分なんかより階級は上の上。相当経験と年数を重ねないと言えないところだ。……ということは、キャリア組か?
その男は、トムさんを見てニコリと笑った。
「や、田中さん久しぶり。そこにあるのお土産だから、お話は置いてとりあえず食べなよ」
…………………とりあえず、なんか、気に入らねぇ。
それが、科捜研の影の支配者、千里眼、情報屋など、いかにも怪しい名をいくつも持つ、折原臨也との出会いだった。
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