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「わぁっ!やっぱりイザヤの作るお菓子は美味しいね!ね、兄ちゃん!」
「ま、ジャガイモヤローよりはな」
「はは…ありがとう、二人とも。それより…
何で、俺ここにいるの?」
日本で頑張って自販機投げてるだろう静ちゃんへ。
俺は今、ギルさん曰くの『天使』。トーニョさん曰くの『楽園』に、何故かいます。
**********
「この間は、トーニョが悪かったな。日本にいつまでも滞在しやがって」
「いや、こっちこそ迎えに来てくれたみたいで、ありがと。ギルさんはそんなに怒られなかったって聞いたけど…」
「ギルは根がまじめだから、日本でもネットとかでお仕事してたってルーイが言ってたよ~。だから、迷惑掛けるなってしか怒れなかったって」
流石だよねぇ。と言われ、そう言えばブログだなんだと言いながら、その脇にあったのはドイツ語の書類だった気がする。……イヤ待て折原臨也。流されるなこの二人に!
レストランが定休なのは知られているだろうが、自宅にいたことを知っていたのは十中八九、フランシスのせいだろうと臨也はみていた。何故って、そうフランシスに言っていたからだ。
しかし、何故呼ばれたのか…。というか半ば拉致られる様にしてイタリアまで連れてこられたのか。それがわからない。いくら情報屋としてヨーロッパにもこの五年で深く根を張った臨也でも、このくるん兄妹の思考は結構謎だった。
しかし、それは臨也が紅茶を含んだ時、フェリシアーノからの爆弾発言によって咳き込まされると同時に明らかになった。
「で、『シズチャン』って人とくっつけたの?」
「ッゲホ…!な、ななな…」
「あ~!赤くなってるっ!か~わいいなぁ。イザヤって、普段は美人だけどこういう時は可愛いよね!」
「…大丈夫か」
「そ、そう聞くなら、ちょっと止めてくださ…!」
「無理だな。で?ヤったのか」
「っ…ばっ、なっ…!!」
「ギルもフランシス兄ちゃんも、本人に聞けって言うんだよぉ。トーニョ兄ちゃんが教えてくれようとしたら関節技かけて気絶させちゃうしさぁ」
赤くなる臨也をよそに、二人はニコニコと、あるいはニヤニヤと話を進めていく。
「で、どうだったの?キスは?手とか繋いだ?あっ、デートはしたの!?男同士だからってデートしないのは駄目だよ。臨也はベッラだから、女装でもしちゃってもいいかなぁ…。ね、フランシス兄ちゃんに内緒でパリコレでない?」
「いいなそれ」
「で・ま・せ・ん!!」
どうしよう、このキラキラとした笑みが痛い。ロヴィーノに助けを求めようにも、完全に煽り役になっている。しかも、
「そういや、どっちが上?」
「うっ……!!」
時折とんでもない発言をさらりと落とすのだ。バランスが取れた双子である。うちの妹達みたいだ。しかも、取り扱い説明書をまだルートヴィッヒから全部もらっていないので余計悪い。
「イザヤ、逆ナンとかもさらっとあしらってたもんね~。いいなぁ、愛されてるなぁその人」
「呼べばいいんじゃねぇか?こっちに」
「はぁっ!?」
「あ、いいねぇそれ!妹さんとかくるんでしょ?その時に呼んでよイザヤ!!」
もう駄目です、オーバーヒート寸前です。え?『折原臨也』らしくないって?当たり前でしょ。他人の恋愛ごととか昼ドラ並のドロドロとかなら、操るのも見てるのも好きだけど、俺は自分のことでこうされるのなんて慣れてないんだよ!!
「てか、よ、呼んで何す……」
「え、イザヤに相応しい男か見るんだよ?フランシス兄ちゃん達だけとかずるいし!」
「あんたらは小姑か!」
「似たようなもんじゃねぇ?」
「えぇ!?」
無邪気な顔で凄いことを聞いてくるフェリシアーノと、さらりと爆弾発言をするロヴィーノ。これに空気を読まないアントーニョが加わってみろ、静ちゃんが赤面して石化するのは目に見えている。
アルフレッドを入れないのは、流石にそんな様を見て空気を読まないほどではないと信じているからだ…一応。
「後ほら、知らないんだったらさ、やり方とか、ちゃんと教えてあげないと!イザヤもその方がいいでしょ?」
「それは余計な御世話だっ!!」
しかし、アーサーさんが出てこないだけまし…だろうなと、臨也は頭の片隅で思った。
**********
「おーい、イザヤどした~?」
「ギル…さ……」
「疲れたって顔してるぞ。ローデリヒー、ザッハトルテってまだあったか?」
「ありますよ」
それから数時間後、ぐったりとした臨也はアニマルセラピーを受けにドイツ宅までやってきていた。何故ローデリヒがいるのか、とかは割愛。
「どうかしたか?いや、イタリアにいるなら夕飯食ってけって言ったのは俺様だけどよ…」
「は、ははははは…。はぁ……」
ローデリヒお茶とザッハトルテを持ってきて落ち着いたところで、イザヤはヴァルガス兄弟とのやり取りをかいつまんで話した。すると、ローデリヒは頭を抱え、ギルベルトは少し顔を赤くしながらも苦笑する。
「あの子達は全く…」
「あ~…はは。ほら、フェリちゃんもロヴィちゃんも、お前のこと心配だったんだって」
「それは嬉しいですけど、少しくらい八橋にくるんでくれたっていいじゃないですか…」
当分、イタリアには一歩も足を踏み入れたくありません。
そう言ってひよこさんクッションを抱きしめた臨也は、不機嫌そうに目を細めた。
それを見て、二人は笑う。
「で?ヘイワジマのことも呼ぶのか?」
「うっ、だって、呼ぶ方向でもう計画立ててるんですよ…。静ちゃんパスポート持ってないし、池袋の喧嘩人形が長く池袋を留守にしたら危ないし、どうしようかって…静ちゃんの上司とかと連絡取ってて…」
「本人には?言ってないのですか」
「外堀埋めてから」
どうやら、断れないようにしてから旅行話を持ちかけるらしい。ちょっと恥ずかしそうにしながらも、その頭の中ではいかに外堀を埋めるか策謀が渦巻いているのだろう。
「…ま、そうなったらルッツでも見張りにつけるか。あいつは真面目だし、少しはストッパーになるだろ」
「まぁ、そうなりますね」
「うぅ、ありがとうございます…」
妹達もいたら確実にヴァルガス兄弟側だから、まず、こちらに来たら静ちゃんと双子を分けなければいけない。それが臨也の第一目標だった。
「まぁ、フェリちゃん達はめげないし…。変なことヘイワジマに言って、襲われないように気をつけろよ、イザヤ」
「うぅっ、し、静ちゃん…変なところでマニアックだしなぁ…で、でも、(多分きっとおそらく)大丈夫ですっ!」
「……」
「…まぁ、そう、だな」
イザヤって意外と墓穴掘るよなぁ。とは、時折ギルベルトやローデリヒがしみじみと感じることであった。
あとがき↓
静ちゃんのヨーロッパ旅行記も書きたいですが、現地がよくわからないので難しい…。