昼の池袋。
いつも通りビラを配りながら客引きをしていたサイモンは、見慣れた、しかしこの時間にここにはいないはずの二人に声をかけた。
「オー、シズオー、イザヤ。スシクウ?」
「おぅ、サイモン」
「あ、食べる食べる!静ちゃんと街中走り回ったせいでお腹すいちゃって」
「俺のせいかよ」
現在時刻、12:30。
高校では昼休みの時間だが、二人は授業が終わるとともに逃走と追跡で高校を飛び出してきたらしい。
「二人トモ、喧嘩ヨクナイネ~」
「今日はこいつがわりぃ」
「静ちゃん、曲がりなりにも今はテスト期間前だよね?真面目に勉強に時間費やして何が悪いのさ」
そう言いながらも、二人はパクパクと寿司を口に運び、味噌汁を呑んでいく。いっそ素晴らしい食べっぷりだ。
「妹には作ってんだろうが」
「………ちょっと、それ誰から聞いたわけ」
「お前んとこの双子」
何やら知らないが、臨也は忙しくて、静雄との約束を破ったのだろうか。
そう聞くと、二人して否定する。では何で喧嘩になったのだろうか?
「あれは土日だったからで、平日に作る気力はないの」
「じゃあ月曜に持ってこい」
「あぁ言えばこういう奴だね静ちゃんっ…!」
ギャーギャーと言いあいながらも、二人は食べる速度は変わらない。
「あ、サイモン。ドタチン達にお土産にするからさ、少し包んでー」
「オー、イイネー。並?」
「うん、俺そんなに今金持ってないしね」
その間も、静雄は臨也の残っていた分まで平らげていた。しかし、それを見ても臨也は怒らない。それどころか食べろと静雄に差しだした。
「イザヤ、モウイッパイ?」
「うん。ごめんね。美味しいけどちょっと食べきれなかった……」
「だから、俺と同じの頼むなって言ってんじゃねぇか」
「うるさいなぁ、食べれると思ったんだよ」
再び口喧嘩へと発展するが、静雄は何も掴んで投げようとはしないし、臨也もナイフを出さない。
あぁ、存外、この二人は仲がいいのか。
その日、『喧嘩するほど仲がいい』を実地で学んだサイモンだった。
おまけ:
「はい、露西亜寿司のお寿司。これ食べながら勉強しようか」
「お、サンキュー」
「待ってました!外に走り出したからちょっと期待してたんだ」
「てめぇらなぁ……」
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