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折原臨也は、ただただ固まっていた。
そして、目の前にいる予想外かつ秘密を知られたくない人間No.1の栄光に輝く人間もまた、ものの見事に固まっていた。
お互いに沈黙が走るなか、正気になったというべきか、先に反応したのは入口を背にした、自分ではない方で。
明らかに叫ぼうとしたその口をとっさに塞いで急いで扉を閉める。
「てっ、め…!」
「黙って…。でないと、その眼球えぐり取るよ」
自分が混乱した頭で考えうる最高の攻撃と脅し文句を言いつつも、あぁなぜこうなったのかと臨美は、そして平和島静雄は互いに回想する。
時間は、5分前。
体育が終わった時まで遡る。
**********
「あ?臨也ぁ?」
「そ。僕のと学ラン間違えて持ってったみたいなんだよねー。何か電話来て急いでたみたいだったからさ」
静雄、次サボるんならついでに届けてくんない?次化学だから僕出たいんだよね。
そういけしゃあしゃあとのたまった新羅は、おそらくきっと絶対、この来神学園一の勇者だろう。
あの折原臨也と平和島静雄の間に入る、門田京平と並ぶたった二人の人間だ。
「……わあった」
「うん。昼は屋上だって、ちゃんと臨也に伝えておいてね」
多分体育館倉庫だよ。と、そう場所を伝えた新羅は、何も知らないし予想もしていなかった。
そして、もうしばらく、何も知らないこととなる。
**********
「ったく、新羅の野郎…」
なんだかんだ言いつつも体育館倉庫に向かった静雄は、臨也の学ランを手に持って歩いていた。
ナイフでも仕込んであるのか、それともまた違うのか、臨也のそれは、自分や新羅のとは何か違う。だから、新羅はすぐにわかったのだろう。
少しだけ、学ランの生地が厚いとか、肩幅の部分が妙にしっかりしたつくりになってるとか、本当に違う。
まさか、作りなおしたのだろうか。
「おい臨也。新羅が学ラン間違―――――」
つらつらと考えながら、がらりと体育館倉庫の扉を開ける。
電気もつけずに着替えるとはバカか。バカだな。
そう頭の中でどこか冷静に考えることはできても、しかし、用件たる言葉はすべて言えなかった。
「し…ず……」
そこに、確かに人はいた。
しかしそこにいたのは、膝まではある長い黒髪に、自分の背からの光で白さが分かる肌。
そして、体育及び今日の朝に自分が付けて、新羅が巻いた、包帯……。
「なっ、お、おおぉぉお前……っ!!」
「っ!」
あまりの衝撃に、固まりはしたがすぐに叫ぼうとした静雄の口を、『少女』の手が塞ぐ。
すぐに抵抗しようとしたが、いつの間にか視界いっぱいに鈍く光るものが接近していた。ナイフだ。
そして、冒頭に戻る。
*****
結論から言おう。
ナイフを突き立てられたとはいえ、それが半ば日常と化した静雄には、あまり長時間脅す要素ではなかった。
すぐさまナイフを持つ腕をとってナイフを落とす。
「手前っ…!!」
「ちょ、待って!足元暗くて見えなっ……!」
「うお、危ね…っ!」
まぁ、当然のことながら、電気がついていないので足元が見えずに倒れ込む。
「った~…ちょっと静ちゃん、少しは考えて行動してよ…」
「わり…てか、やっぱお前臨也か…!?」
「っ!?」
しまったと、そうでも思ったのか、多分自分の下にいるんであろう臨也は暴れだした。
「ちょ、てめ、いきなり動くな」
「ひゃっ…!?ちょ、静ちゃんこそ動くなてか動かないで頼むから!」
「あぁ?!」
「ちょ…!?だから手を動かさないでってば!」
焦ったような声に、ふと、血が上っていた頭が冷える。
手…?そういや、さっきから……床…とは違うし、腕でもない……ものを、掴んでいる…ような………?
そう考えた瞬間、何かが切れる音を静雄は確かに耳にした気がした。
「だっかっらっ……!人の胸いつまでつかんでやがるこの…セクハラ!!!」
瞬間、腹に見事に入れられたひざ蹴りによって、その音が何なのか知る由もなかったけれど。
タイトルは某機動戦士種運命の主人公さんより。
もうちょっと書きたかったけれど長くなりそうだったので。
続くかは分かりません!