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その日、奇妙な手紙が来て、小学校5年生であったはずの俺は、小学校六年生になるはずだった俺の人生は、綺麗に方向を転換された。
やってきた手紙は、『ホグワーツ魔法魔術学校』というところから。何の悪戯だと思っていれば、両親がそれを見て驚き、自分の実家に連絡を取り始めたのだから驚きだったけれど。
そして、どちらも祖父や祖母が、この手紙に書かれた場所の卒業生だと言われ、更に困惑するしかなかった。
両親は自分には来なかったが、静雄には来てよかった。もしかすると、あの『力』は魔術が関係していたのかもと、そう語りながらも、幽と共にある奇妙な場所へと静雄を連れていった。
そこは、何かの本や映画にでも出てくるような、そんな場所だった。
店の人間はそろって、着物や、奇妙な造りの服を着て、街並みも、今時の日本では歩行者天国でなければあり得ないだろうという広さの道。露天商が多く連なり、祭りかとも思うにぎわい。
時折、自分くらいの小さな子供が一人で歩いているのを見た静雄だったが、声をかけようと思う前に、その子供は慣れた調子で路地裏や店の中に消えていった。
それが、半月前。
「俺、これからどうすりゃいいんだ…?」
トラウマになりそうな出来事を経て家族にホームで見送られた静雄は、どのコンパートメントに座ればいいのか。とキョロキョロと列車の中を歩いていた。どこも大抵満杯だし、東洋人は少ないのか、物珍しそうな目で見られるのが不快だった。
やがて、列車の端の方まで来ると、一つのコンパートメントを見つけた。覗き込んで見ると、誰もいない…わけではなく、同い年くらいの少年が一人。しかも、見た目からしてアジア系だった。
思い切ってコンパートメントを開けて、空いているかと尋ねれば、にっこりと笑った少年はどうぞ。と、日本語で返してきた。
「お前、日本人…?」
「もちろん。君もだろ?静雄君…だよね?」
「っは?」
「あれ、忘れちゃった?二年前に転校した岸谷新羅だけど…覚えて、ない?」
にこりと笑った少年の面影が、二年前、夏休み前に転校していった少年に重なる。唯一、自分に臆することなく接してくれた人間だったから、あの時は少し寂しかったのは覚えていた。
その…岸谷、新羅?
「覚えては、いるけど…お前もその、ホグワーツ?」
「うん。うわぁ、また君と同じがっこうに通えるなんて、嬉しいな。寮が違っても、仲良くしてね」
「…寮?」
両親から、列車での話題にもなるし、行ってない人間よりは学校で先輩達に聞いた方がいいと何も語られなかった静雄は、こちらの世界のことを基本的な部分は教えられたものの、学校に関してはさっぱりである。
それをくみ取ったのか、新羅は簡単に説明するよ。と言って、ノートを一冊取り出し、さらさらと図を書き始めた。
「ホグワーツの他にも魔法学校はあるんだけど、それはまた今度ね。寮は、4つあるんだ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そして、スリザリン。自分の意思、もまぁ入るけど、資質を見て、その寮はとある存在によって選ばれる」
「とある存在?」
「まぁ、それは見てのお楽しみさ」
他にも、寮によっては仲が良かったり、壊滅的に仲が悪い寮もあるという。もしもその仲が悪い寮に知り合いや友人が行ってしまえば、気軽に声をかけるのも難しいらしい。
新羅の話は、具体的かつ退屈しないものだった。慣れたように説明する彼は、きっと以前から色々と調べていたに違いない。
そこでふと、新羅の隣にしなやかな黒猫が寝ているのに気がついた。バッグを陰にして寝ていたその猫は、流石に人の声に気づいたのか、むくりと起き上る。
「その、猫…」
「ん?あぁ。もう一人、このコンパートメントを使ってる奴がいるんだ。ちょっと他の知り合いに捕まってまだ戻ってきてないけどね。そいつの猫だよ。君も、猫かフクロウ、いるだろ?」
「あ、あぁ…いる、けどよ…。その、籠に入れてなくていいのか?」
「大丈夫だよ。彼女は賢いからね」
そう言って猫に同意を求めるように新羅が顔を向ければ、なぁ。と、それが当然と肯定するかのように猫は鳴いた。
猫、というか動物好きの静雄は、その猫の賢さに目を丸くせざるおえない。
触っていいか、と聞けば、この猫は気難しいから、気にいらなければ容赦なくひっかくから止めた方がいいよ。と苦笑された。
「この子の飼い主もなかなかプライドが高いけど、でも、きっと、静雄君と仲良くなれると思うよ」
「そうか?それなら…」
いいな。と言おうとした時、コンコン、と、コンパートメントのドアがノックされた。
なんだろう、と思って見てみれば、ドアを開けて入ってきたのは、少し長身の少年を連れた、銀髪に赤眼と言う、不思議な色合いをした少年だった。
あとがき↓
先日のハリポタを見て、思わず…。