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さて、19個目ですね。何か、沙樹ちゃんが臨也さん化してく…でもなんかかわいいからいいかな。
来神組+情報屋ファミリー
「臨也、そう言えば前々から貴方にお願いしたい事があったのだけれど」
「?」
それは、とある昼下がり。
久しぶりに臨也のマンションに、四人そろって仕事の日だった。
**********
「珍しいね。波江が俺に頼みなんて…。誠二君の秘蔵写真はこの間新しいのあげたよね。臨時ボーナスとして」
「何やってんすか?!」
「えぇ、いい腕だったわ…流石ね沙樹」
「臨也さんのお知り合いのカメラマンさんにご教授いただいたんです」
「ちょ、沙樹さん!?」
今日も今日とて、この四人で集まればツッコミ要員となるしかない正臣は何の話題だ?!と戸惑うばかりである。が、『誠二』が誰で、波江がその人物をどう思っているかは知っている。
……しかし、そこで何故沙樹がでてくるのか。
そう言う思いを持って臨也を見ていると、視線に気づいた臨也は苦笑して沙樹を見た。
「沙樹がねぇ、正臣の誕生日に買いたいものがあるから、何か臨時のアルバイトはないかって言ってきてさ。ちょうど良いから、波江さんへのボーナスを獲りに行く手伝いをしてもらったの」
「何か納得しましたけど、表現違くないすか」
「そこら辺は気にしないようにね。…誕生日、楽しかったろ?」
「え、えぇまぁ……って。何であんたが知ってるんですか!?」
あの日は、沙樹と共に新しく出来たテーマパークに行って来た。そう、行って来たのだ。しかし何故それを知っている。
「答えは簡単。俺が情報屋だから」
「答えになってませんっ!!」
「で、どうしたんですか?波江さん。お願いだなんて」
「あぁ、そうね…。臨也」
「?はい」
改まったようにこちらを見てきた波江に、臨也もまた、持っていたカップを置いて波江に向き合った。
数秒の沈黙に、いったい何なのだろうかと波江以外の全員が思う。
まさか、給料上げろとかかな。俺、結構標準以上の給料設定してるって思うんだけど…
まさか、臨也さんの我儘っぷりに業を煮やしたかな、波江さん…。いや、でも、それさえも最近楽しんでるような…。あ、写真の追加?いや、違うって言ってたしなぁ…
どうしたんだろう。何かあったのかな…。こんな風に、自立して立ってる二人って目標だから、臨也さんと波江さんには一緒にいてほしいなぁ…
三者三様。何やら、全く違う事を思っている気もする人物がいるが、それは置いておいて。
波江が口にしたのは、全くの予想外だった。
**********
その日、珍しい事に岸谷家には静雄のみならず、門田までもが訪れていた。いないのは臨也と、仕事で出たセルティだ。
「それにしても…忙しそうだな、セルティは」
「うん。何でも、情報の書類の運びが多いらしいんだ。ほら、新しい商品開発で、今色々と話題になってるだろ?産業スパイとかもいるらしくてね、臨也がセルティに頼んで、それを運ぶのが多いみたい」
おかげで、忙しいからと普段よりだいぶ色をつけて渡されている報酬は、そろそろ7桁に行く。
セルティも何か買いたいものがあるらしく嬉しそうだが、新羅としてはセルティとの時間が減って不機嫌だ。
「だからさ、静雄、ちょっと臨也の家まで行ってパソコン壊してきてよ。そしたら臨也仕事できないから」
「ぁあ?何で俺が…」
「そうだぞ、岸谷。いくらなんでも止めとけ。臨也の報復はお前に向くぞ」
「え、静雄に行くだろ?」
「いや、臨也の事だからきっちり裏までとってお前に向けるだろう。忙しいからと、池袋どころか新宿の街中にまで顔を出してないらしいからな。籠って仕事中じゃないのか?」
「えぇ~……」
口をとがらせて不満そうにするものの、仕事が立て続けに入っている時の、臨也の機嫌というものは凄まじい。今は助手もいてくれるそうなので少しは楽になっているかもしれないが、そう言えば、そんな時に静雄が臨也お怒らせそうになった事があったなと、人事のように新羅は回想した。
情報屋の仕事関連ではないものの、一度、中学の修学旅行時に一晩徹夜でセルティへの思いを語り、次の日臨也は教師に切実に部屋替えを願ったという事実があったりする。
「あぁ~…早く帰ってきてよセルティ~…」
テーブルに突っ伏してさめざめと泣く臨也に、静雄と門田は呆れるしかない。まぁ、いつもの事だ。
そんな時、電話のコール音が響いた。
誰からだろうと、動きたくないと思いつつ新羅が相手の名を見ると、それは現在、家に籠っている情報屋の名前。
「…臨也?」
『あぁ、やっと出た。今は平気?』
その声は、存外元気そうだった。いつもならば少々疲れたような声が聞こえてくるのだが、流石に誰かが居るからだろうか。昔のように点滴が必要で電話してきたのではないらしい。
臨也の名前に反応して静雄が立ちあがろうとしたが、それを手で制して、新羅は平気だよ。と答えた。
「どうかいしたのかい?」
『え、いや、さぁ…?俺の助手っていうか、秘書というか、まぁその人がね…?まぁ、他の子もなんだけど』
「?他?君、他にも人を雇ってたのかい」
話で聞いていたのは、一人の女性を助手として雇ったという話だった。それ以外は聞いていなかった新羅がそう聞くと、それはいいから。と臨也は用事…実に意外な、というか奇想天外なことを言い出した。
『うちの秘書が…その、君を主治医?ってか、まぁ、治療を君にしてもらうのをやめろって』
「……は?」
**********
新羅の呆けたような声に、ですよね~。と臨也は頷いた。そんな臨也の後ろでは、三人がジッとこちらを見ている。沙樹はともかく、正臣は別に新羅に対して隔意とか持っていなかったはずだが…。何故。
そこに、喧嘩人形とか色々絡んでいるとは、さしもの臨也も思わなかった。
『…え。何でそんなことになったのさ』
「いや、俺にも分かんないんだけど……。うん。で、しばらく運び屋にお仕事お願いはするけど、新羅のところに治療頼むのは控えようかな…。という、電話です。はい」
『え?!ちょっと、どうしてそれでそうなるのさ。天上天下唯我独尊、自分の道を何が何でも貫く君が、助手の一言で!?』
「………………じゃ、俺仕事があるから…」
『あぁっ、ちょっと待って!!』
まぁ、新羅の言葉に納得できるが、こうはっきりと言われると、臨也としては不愉快である。しれっと電話を切ろうとして待てと言われたのは計算済みだったが、
『臨也、どうした?』
「…ドタチン??!」
流石に、門田がいるとは予想外だった。
『あぁ、俺だ。ちょっと岸谷の愚痴を聞かされててな…。静雄もいるぞ。静雄、出るか?』
『いや、いい』
どうやら、自分以外の三人全員がいるらしい。新羅の愚痴と言えば大抵セルティ絡みだから、自分が頼んだ仕事が立て込んでのことだろう。
「で?どうしたのさ、ドタチンまで……って、え、ちょっと沙樹?」
「あ、すいません。臨也さん仕事のメールが来てます」
すっと、後ろから子機が取られる。
沙樹に言われてパソコンを見ると確かに仕事関連のメールだったが、九十九屋からのだから別に…。と思って振り返ると、沙樹は既に他の二人のところへ戻っていて、しかも自分の代わりに会話していた。
「ちょ、沙樹?」
「すいません、お仕事のメールが入っちゃったので、臨也さんの代わりに…いいですか?」
『ん?あぁ、別にいいが…君、は?』
「臨也さんのところで、お仕事のアルバイトしてる者です」
『…声からして、学生だろう。学生が情報屋の手伝いか?』
「臨也さんは学生時代から情報屋をしてましたって聞いてますけど?」
言外に、『それに何も言わなかったあなたが何か?』と言っている。それを見て波江はそれもそうね。と頷いたが、正臣としてはなんだか最近、自分の恋人が黒くなってきている気がしてならない。沙樹だからいいが。
ふとその元凶だろう人間に目を向けると、先に電話取られた…。とメールからいつの間にチャットに移したのか、九十九屋相手に愚痴っている。
あの人も、こう見ると子供だよなぁ…。
ふと、自分が一番年長者に思えてくる正臣だった。
そんな間にも、沙樹VS門田の異色の対決は続いていたが…何だか怖いので割愛…。
「沙樹、貸してくれる?」
「あ、はい」
「私が折原の助手ですが…。岸谷先生はいらっしゃるかしら」
『……あ、はい。僕が岸谷ですけど…』
「突然すみません。実は、
先日貴方のお父様とお会いして心底信用ならないと思ったので、上司の身の安全を守るべく、このような措置を取らせていただきました。
…貴方と折原が中高の友人だという事は知っているのですが、流石に……」
電話の向こうで、新羅は唖然とする反面。あぁ、それなら仕方がないかな…。と、父を思い浮かべた。
うん。それなら納得。
父親への信頼がないのかと聞きたいが、新羅としてはあの父を信用するなら臨也を信頼する。
うんうん。と頷いていた新羅に、電話の向こう側で納得したと判断したのか、助手とも、先程の意外なほど口のまわる少女でもない、少年の声が臨也に電話を渡すのが聞こえた。
どこかで聞いた事があるような…。とおもうが、三人とも瞬時に思い出せない。
『…新羅?』
「あ、あぁ。臨也かい?あの父さんが関わっているのなら、僕には仕方がないとしか言えないみたいだ。どうせ池袋には来るんだろう?ほら、呑みに行くぐらいなら…」
父親のフォロー、というわけでもないが、情報屋である臨也…しかもその臨也に進言してそれを受け入れられる人間からの信用が無くなったとなると、新羅の闇医者としての生活も危ない。
とりあえず、自分への信頼はあげとこう。そう思ったが、存外いじけたような、キーボードのタッチの早い音をBGMとした臨也の声に、新羅を含め三人は絶句するしかなかった。
『いいよ、別に…。仕事もあるし、しばらく池袋行かないから…。あぁ、静ちゃんいるんだっけ。半年ぐらい行かないからさ、もう平和に過ごしちゃっててよ。いや、もう行っても会わないように努力するから。うん。そうしよう』
「…い、臨也?」
『ドタチンも一緒になってさ…。いいよ、俺、ちょっと仕事終わったら出かけてくるから。国外に』
「?!い、臨也!また危ない所に行くつもりか?!」
先日、臨也が紛争地帯だのなんだのと、危ない所へ行ってくると笑顔で言い残し、本当に半年ほど帰ってこなかったことを思い出す。五体満足で帰ってきて土産話をする姿にはホッとしたものの、その内容はほぼ、戦場。いつ、大怪我して命を落とすかと思うと不安でしょうがない。
『それじゃ…。あぁ、運び屋に、来週仕事3つ入りそうって言っといて』
ぷつりと切れた電話に、何だったんだ…?と思った二人は、静雄のぽつりと言った言葉にまさか。と空笑いするしかなかった。
「……あいつ、仲間外れにされたとか思ったんじゃねぇか…?」
うん。まさか。
**********
………だったりする。実は、紗希達が電話を受けている間話していた九十九屋に、するすると誘導されたのだった。
勿論、誘導されたと臨也は理解している。しかし、そう思うとそれから外れにくいのが人間の感情だと割り切って、電話を切った。
「あ~…いいんすか、臨也さん」
「別にいいよ~だ。あ、仕事終わったらさぁ、タイとかさ、色々行かない?美味しいもの食べて、あと、沙樹と波江はエステとかどお?」
「あら、いいわね」
「海外ですか…?」
「うん。知り合いがホテル経営してるから」
格安格安~と笑顔で仕事を終わらせていく臨也は、どうやら旅行という名の国外逃亡するのが決定済みのようだ。
まぁ、美味しいもの食べれるのはいいな。と正臣も頷いて、子機を充電器に戻す。
「…じゃあ、俺色んなパンフ、資料室から出してきます」
「あ、私も手伝うよ、正臣!」
どうやら、沙樹もノリ気のようだ。と、池袋にいる新羅達には悪いが、波江さんの機嫌と海外旅行には変えられないと、正臣は無理矢理納得したのだった。
あとがき↓
ちょっと難産でしたが…軍配は新宿組で。口撃だったら、臨也さん抜きでも圧倒的にこっちの勝ちですよね…。