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『彼』が、自室へと戻る為に寮の前に立つと、いつも通りの謎かけが降ってきた。
ろうそくが10本燃えていた。
そこへ風が吹いて、2本消えてしまった。
また後で見に行くと、さらに1本消えていた。
そこで風の当たらぬように窓をしめた。
それからは残り1本もきえなかったとして、最後まで残ったろうそくは何本か?
「……今日は、随分と簡単なんだな……。手でも抜いてるんじゃない?
答えは、『三本』」
そう答えると。当たり。という声と共に、その扉は開かれた。
ついでにと、彼はドアノッカーの鷲にめんどくさくなった?と聞けば、お前相手に出すのがばかばかしくなったと一言呟いて沈黙してしまった。
それに肩をすくめて、彼は談話室に入る。………と、そこには、己の寮とは違う寮の人間がいた。
同じ寮生は、既に諦めたのかその人物を放置している。
まったく、先生に見つかったら面倒なことになるのに。と嘆息しつつ、彼は…臨也は、図書室で借りてきた分厚い本でその人物の頭を小突いた。
「新羅…来るんなら俺の部屋にいろって言っただろ。談話室にいるな他寮生」
「あぁ、おかえり臨也。君に渡すものがあっただけだから来たまでだよ。すぐに帰るさ。そろそろ、セルティからの手紙が来る頃だからね!」
「あぁ、そう……。どうせクリスマス休暇に会おうっていう打ち合わせでしょ。で?渡すものって?」
「父さんからのお土産。エジプトのパズルだってさ。他にも色々あったけど、いい暇つぶしはこれくらいだと思ってね」
そう言って渡されたのは、あからさまに封印されている、ぐるぐると呪文の書かれた布でまかれた小箱。
あの人医者じゃなかったっけ。と思う反面、うちの親も似たようなもんだ。と臨也はため息をついた。
「ありがと。そういえばさぁ、校長と寮監に明日朝一で呼ばれてるんだけど、君知ってる?」
「うん。僕もだからね。飛び級試験の事じゃあないのかな。せっつかされてるし」
七年間満喫したいんだけどねぇ。と新羅が呟くと、全くだ。と臨也もため息をついた。
新羅はスリザリン寮だが、その狡猾さと共に高い知性は、レイブンクロー寮寄りのスリザリン生。と、特例で二寮に籍を置かれている人間である。この場合、新羅の母がスリザリン生であったことも、寮を決めるきっかけだったのだろう。
一方臨也は、誰よりもスリザリン生らしいレイブンクロー生と、寮内外から称賛を受けるほどの狡猾さを持ちながら、組み分け帽子に面白そうな本があったから読みに来た。の一言でレイブンクローに入れられた人間で、同じく特例で二寮に籍を置いている。
ちなみに、二人は現在9歳。本来ならば入学していない年齢だが、紆余曲折色々あって、今年入学したばかりである。
その辺についてはまた今度。
「じゃあ、また来るね~」
「せめてスリザリンの服でくるな」
そう言って新羅が帰るのを見届けると、臨也は周りにいた、苦笑している寮生にごめん。と謝った。
同級生や後輩というよりは、その幼さゆえに弟のように見られている臨也に、もう慣れて諦めている周囲は別にいいよ。と臨也の頭を軽く撫でて自室へ戻って行く。
ハッと時間を見れば、そろそろ寝なければいけない時間だ。
「このパズルは明日解くか…」
夜ふかし厳禁。と、他の寮生よりきつく言われている臨也は、寝ないと明日の朝一で校長室に行けないな。と自室へと戻る。
明日は、どんな悪戯をしようかと考えながら。
蛇の貌を持ちながら鷲の少年と、
鷲の貌を持ちながら蛇の少年は、
本来の時間にやってくる未来の友人達を待つかのように、魔法に満ち霧に隠れる城で、眠りに就く。