今オフのif.書いてるんですが、内容が「シズ→→→→→→(←←←←)イザ」くらいになっていて、何やら静ちゃん不憫になってるんですが…まぁいいかと書いております。どうせ報われるんです、基本、報われないのが苦手なので…(汗)
さて、先日UPしたクロス。静ちゃん達と再会したら~と書いてあったので、なら書いちゃえばいいじゃない。と考えてたら予想以上に長かったので中編くらい~長編です。本っ当に時々更新予定。本日は、ちょっとした予定から局地的にギャグ。
ちなみにタイトル未定。
その日、三味線を引きながら酒を楽しんでいた高杉の下に届けられたのは、優美な文字で己の名が書かれた一通の文だった。いや、それどころか書状レベルの、随分と分厚いそれだった。
届けに来た万斉も誰からのか気になったのか、高杉から少し離れて座っている。
一方、字体だけで誰からのか悟った高杉は、少々呆れながらも…どうせ、また舞台を見に来いとかいった内容を厭味ったらしくウザいくらいに遠回しに書き連ねているのだろうと、そう思って広げると、そこには優美な文字で、実に意外な言葉が書かれてあった。
愛しの晋兄様へv
ぐしゃり。と、その文字を見た瞬間に紙が手の中で紙屑へと変わる。
そしてそれを数回破くと、高杉は躊躇う事無く火にくべた。
流石の万斉も予想外の行動に、腰を引きながら尋ねる。
「し、晋助…?」
「ぁあ?」
「え、あ、いや…何でもないでござる」
何が書いてあったのか聞けない。怒気が強い。あえて言うなら殺気が怖い。
どんな事が書いてあったのかと考えを巡らせようとした時、高杉はスッと、その右手を万斉につきだす。
「…」
「…………………」
「……し、晋助?その手は何でござるか」
「もう一つ、あんだろうが。寄こしやがれ」
「…確かに、もう一つ、先のを渡した後にと言われたが…何故知っているでござる」
「うるせぇよ。長年の経験だ」
「は?」
訳が分からない。しかし、晋介から聞こえてくる音は、リズムは、怒りに支配されたそれだけではなかった。
どちらかといえばそれさえ楽しんでいるような、楽しげなリズム。
それと混ざるようにして、まるで音楽が詰まっているかのように、晋助に音を届けているのは、その手紙だった。
一体誰からのだろうか。そう思う万斉を横目に、高杉は改めてそれを広げた。
今度こそ、始りも内容も、始りも、至極真っ当だった。
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拝啓、
京の暑さに夏が来たと実感する季節が来ましたが、体調などはいかがでしょう。しっかり三食食べて、規則正しく生活しておられるでしょうか。臨はそれだけが気がかりです。
さて、先程は失礼をば致しました。まぁ、久しぶりのお茶目とでも思い、寛大な御心で許して下さればと思っております。
この手紙は、列車の中で書いております。
本来ならば萩へと帰り、隊長達の代わりに墓参りをして過ごすのが通年の事でございますが、今回、そうも行かなくなり、このようにして文を送りました。
私が乗っているのは、萩の方へと向かうそれではなく、江戸行きの物です。
お話しようかと迷っていたのですが、どうしてもとうちの皆が押し切られ、この度江戸で公演することになりました。
流石に、皆も嫌だと知っているのに自分一人だけ残るわけにもいかず、覚悟を決めて舞台に立つことにします。
以前、今度晋さんが上方へ行く時こそ共に、と言った口でこのような事を言う事は躊躇われましたので、手紙での報告としました。相も変わらず、度胸のない義弟で申し訳ありません。
また、どうせ江戸に行くならと、皆の墓参りに行く事にしました。他の義兄さん達三人にも会えたらと、それを楽しみにできる事が唯一の救いかと思います。
できれば、晋さんと仲直りできないか聞いてきますね。文句は受け付けません。
いつまでも変な意地を張っていないで、お互い謝ってくださいよ。私が仲裁できるのは、これが最後かもしれないんですから。
狗などには気をつけますが、保証は出来そうにもありませんしね。
そう言うわけで、お体には気をつけて。あまり、無理はせぬように。
敬具
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相変わらず、意味を分かって書いているのか分からない『拝啓』と『敬具』に笑っていた高杉だったが、その表情は読み進めるうちに険しくなっていった。
江戸に向かっている?あれが?『一人』、で。
自分と江戸で五年前に再会するまで、江戸で何があったのかは知らないが、江戸を去った理由は知っている。
あそこには、臨也が心底心を痛め、そして『壊れた』理由があるのだ。
楽しさも苦しさも愛しさも憎しみも詰め込んだ、思い出があるその土地に。
「万斉、この文どっから来たか知ってるか」
「いや…行きつけの茶屋の者が預かっていたでござるよ。先程あって、うちに届いたからとくれたでござるが…」
「……そうか。何か言ってたか」
「何か?…あぁ、やたらと不安そうな顔をしていて、明日にでも急いで江戸に行こうと思うとか言っておった」
高杉は、その言葉に眉間に皺を作った。
あの茶屋の主人は、今でこそもうきき腕を怪我して刀は持てないものの、かつては共に戦った攘夷志士の一人である。勿論、この手紙の主の事も知っている。
そしてそれを自分の部下である万斉に話したという事は…
「万斉、その親父まだ起きてるだろうから伝えとけ。江戸に行く必要はねぇってな」
「は?」
「船出せ、江戸に行く」
「は!?」
そう言うと、高杉は詳しい事は後で話す。と言って、他の幹部にも伝えるためか部屋を出ていった。
まるで嵐が去った後のようだと茫然としていた万斉はふと、高杉が置いて行った手紙を見る。
差出人の名もなければ、配慮したのだろう、晋介の名は『晋さん』と、分かるようでわからないように書かれている。恐らくこの『臨』が、差出人だろう。
その『臨』は、これから江戸に行くと、哀しげな文字で綴っていた。
「…心配、を、しているでござるか。晋助が」
哀しそうな文字は、まるで耐えられないというように、最後に一つだけ、小さく。
いってきます。と、書いてあった。
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所詮、空元気だ。そう分かっていて、臨也は仲間と貸し切った宿で楽しくバカ騒ぎしていた。
からかって笑って飲み比べて、皆が、悲しみや憤りを押しつけていつも通りに騒いでいて、何だか少々気持ち悪い。でも、それが必要だともわかっていた。
そんな思いを吐きだす為に、悪ふざけして手紙を送ったのだが…一通目を見ただろうかあの人。
「…絶対、最初の挨拶で破り捨ててそうだなぁ」
あれには、自分達にそれを依頼してきた人間達の事が書いてあった。おそらく、幕府高官の狗…というよりは、子飼いの役人。しかもいけすかない笑みを浮かべてセクハラしようとするものだから、その場でぶった切らないよう自制するのが大変だった。
もしその後ろが分かれば、何かしでかす時に良いのではと思ったのだが…。あの人の忍耐力が、意外とないことは承知の上の文だったので、後でまた話す事にしよう。
「臨也ーっ!呑んで忘れるぞーっ!!」
「っわ、ちょ、明日の朝早いって忘れてる?!」
「いや、覚えてる、俺ァ覚えてる!だけどな。江戸何ざ行きたくねーんだ今くれぇ忘れさせてくれぇ~!!」
「……………………めんどくさ」
もしや、この酔っぱらいどもの世話は自分がするのだろうか。と思えば、既にこの事態を予測していたのか数人、酒を控えてまだ素面のようだった。
それにほっと溜息をついて、臨也は宴の輪に戻る。
江戸に入るのは、三日後。
あとがき↓
というわけで、ギャグは最初だけでした。うぅん…難しい。
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